狂気(幸村)
「‥参ります、真田幸村」
「ユエ、どの」
槍が彼女の刀にぶつかる。こんなものを望んだわけではない、彼女は甘味屋の娘であって自分はそこの常連だった。ただソレだけなのに何故、今、刀をむける相手となってしまったのだろう。
「旦那!」「手だし無用!」
叫べば部下は歩みを止めた。今、彼女の刀を弾いて咄嗟に出しかかった一歩を引いた。
「何故で御座いますか!ユエ殿!」
懐から苦無を投げて間合いを取る、足元に刺さった苦無、彼女は殺気に満ちていてゾクゾクと足元から震えが走った。
「ユエ、殿」
「話の通り、甘ぅ御座います」
「なぜ、理由を話されよ!」
「理由?‥簡単な事に御座いますな、わたくしは織田の忍びであります」
「なっ‥」
「理由はそれだけで充分にございましょう」
「しかし、織田は‥明智に」
「ええ、明智殿も私が討ちました、次は武田‥の前に貴方にございます、真田幸村!」
「なぜ、なぜ!」
最愛の主を亡くしたつるぎは
「平和など、我らには苦痛にございましょう?わたくしが次期魔王となりましょう」
「ユエどの!」
彼女は強かった。真田に欲しいと思ったが、部下は「もう狂気に呑まれている」と舌打ちをした。
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