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06

「本当に‥ごめんなさい」

「いやいや、俺様こそ」

ユエが起きた頃にはどっぷりと日が沈んでいた。途中、片倉と伊達が来て幸せそうに眠る彼女を見て片倉は「ですからアレは云々」と伊達に文句をいっていた。すっかり寝癖の付いた髪を撫で付けてユエは「遅いから送るわ」と職員室に消えた。佐助は言われた通りに裏口で待っていれば一台の車が来て窓が開く。

「乗って、」

「あ、うん」

助手席に乗り込んでゆっくり発進させる。若葉マークが見えて「安全運転よろしくね、せんせ」と言えば「もちろんよ」と返事、特に気まずくはなかったのは佐助が学校のことや真田のことやらを話してくれたからだろう、ユエは運転しながら興味深そうに聞いていた。

「あ、ここ」

「武田先生の家?」

「そ、俺様さ炊事係だから」

「あ‥遅くなってしまったよね?ごめんなさい」

「大丈夫大丈夫‥ついでにせんせもどう?」

「え?」

「せんせさ、独り暮らしって聞いてるし‥栄養失調だって明智‥せんせいから聞いてるよ?」

「光秀さん‥余計なこと言うのね」

苦笑するユエに「ご飯だけでも」と念を押す。その目はすっかりオカンで「片倉さんみたいだわ」と呟くと駐車場まで案内された。

「‥多分真田の旦那がお菓子食べて凌いでるだろうから見張っててね」

「‥迷惑でないの?」

「大将は出張中だからさ、大丈夫だよ」

「う‥ん、じゃあ‥お邪魔しようかな」

玄関に足を入れると案の定、団子を手にした真田が迎えた。佐助の隣にユエがいて驚いていたが、奥から聞こえた伊達の若の声にユエは驚いていた。

「あらー伊達の若様ってば‥まぁた家出?」

「ちょっとな‥つかどうしてユエが?」

「伊達くぅん、ちょうどよかったわぁ‥ちょっと先生とお話ししましょう、ねぇ?」

ビクッと伊達の肩が震えた。ちょっとだけ低いその声に佐助も真田も肩を引くつかせる。

「Sorry、悪かったって」

「‥うふふ、」

「さ、さぁて俺様はご飯の支度!」

「そ、某は宿題を‥」

逃げるようにその場をあとにした二人に「薄情者!」と伊達は叫ぶ。二人きりの居間に伊達は正座をさせられていて、ユエも正座していた。

「‥ありがとうね」

「は?」

いま、彼女はなんと言った?伊達は意味がわからず間抜けな表情をして俯いていた顔を上げた。ユエは複雑そうな表情をしていたが、嬉しそうだった。

「‥彼は、少しずつ、私を思い出そうとしているの」

「いっそ話しちまえばいいじゃねぇか」

「違うのよ、私は‥待ってるしか出来ないの」

シャランと鳴る左腕を見つめてユエは言うと伊達は「まっどろっこしい」と舌打ちする。そんな伊達を見て「でもあの呪符は卑怯だわ」と言った。

「今日は新月だからな、顔色酷かったんだぜ」

「‥そうね、正直辛いわ」

「飯食ったら帰っんのか?」

「ええ、そこまで迷惑掛けたくないから」

「‥小十郎呼ぶか?そんなんで運転できねぇだろ」

「大丈夫、気にしないで」

「泊まっていきなよ」
「泊まっていってくだされ」

ハモる声に二人はハッとして扉を見ると両手にご飯のトレイを持った真田と佐助がいた。どこから聞かれていたのだろうと青ざめたが、伊達に「正直辛い辺りから気配してたから大丈夫だ」と囁かれた。

「せんせ、辛いならちゃんと言ってよ」

「某たちはもう知り合いでござる、遠慮なさらず」

「‥あの、えっと」

「部屋ならたくさんあるし、来客用の布団もあるからさ」

「で‥でも」

「大丈夫だって、なんかあったら俺がいるし小十郎も呼べば飛んでくる」

「若様は‥もう、」

食事が並ぶ、テーブルに付けばユエの少食さに皆驚いていた。

「そんなんだから栄養失調になるんだよ、せんせー」

「Oh‥まさかここまでとはな」

「先生殿は体調が優れないのであろう、食欲がないのですか?」

「え‥あ、ああそうなのよ」

取って付けたような返事に佐助は残された食事を見つめていた。残った半量強、本来ならそんなんだから細いんだよと言いたかったが飲み込んで、食休みしたらお風呂どうぞと言う

いつの間にか溶けるように傍に

(こわいの、本当は)(思い出してほしい思い出さないでほしい)



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