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02

けたたましい目覚まし時計の音で目が覚めた。二度寝の心地好さに牽かれるが、この時間に起きなくては弁当を作れない。橙色の髪を掻いて起き上りのそのそと自然と洗面所に足が向く。

「‥‥」

変な夢を見た。しかし内容を覚えておらず、顔を洗えばシャッキリとして夢のことなんて忘れてキッチンに向かう。

「だーんな!旦那、朝だよー遅刻するよー」

ノックして声をかければ唸る返事が聞こえる。武田に居候する佐助は炊事を任されていて嫌ではないのだが、流石に高校2年生になってまで真田幸村の目覚まし時計係りが続くとは思わなかった。こんなんで自分が独り暮らしを始めたら真田はどうするのだろうかと不安になりながら、あら熱の冷めた弁当を包んでやる。朝御飯も作り終えて、バッチリ着替えたら、制服ってなんて楽なんだろうと苦笑した。

「おはよ、旦那」

「おはよう、佐助は毎日毎日よく起きられるでござるな」

「あはー旦那はそろそろ自分で起きた方がいいよ」

「‥努力しよう」

ウトウトとする幸村に「ご飯の前に顔洗っておいで」と声をかけて、幸村の部屋で眠っていた黒猫に「ごはんだよ」と声をかける。尻尾がパタリと揺れ動くのを見て「飼い主そっくりだ」と頭を撫でてやる。

「‥黒猫、ねぇ」

そう言えば夢にも黒猫が出てきた気がすると佐助はセットした頭にヘアバンドをして、霞み掛かった頭を二、三度振る、しかし思い出せないのは仕方がないと所詮夢だと思うことにした。

「クロベエ、お前が夢に出てきたのかな?」

「佐助ぇ!行くでござるよ!」

「はいはいよっと」

夏休みも終わり、今日から高校が始まるのだ。大学もならって一月早く始まるのは高等部との文化祭の準備が始まる。早起きしたのは取りたい講義が今日から始まるのもあった。それこそ1単位が取れるためで、他は何かを捨てても大丈夫なようにと学校側の計らいだった。バイトやらなんやらで余裕の無い生徒や外部の大学生進学するため、教科としては直接関係はないのだが単位が足りないとなると進学できない。だから単位が足りない大学部の生徒も数人顔を出すらしい。

「‥先輩の話だと、分かりやすいがレポートが厳しいと言っていた」

「へぇ、でもまぁ教科書見ながら書けば良いって聞いたよ?寧ろ配られるプリントを提出しちゃえばいいって」

「居眠りは許されぬらしいな」

「えーどんだけ怖いんだよ」
「しかし興味がなければ眠くもなろう」

どんだけ怖い鬼婆だと佐助は苦笑する。しかし一度しかない高校生活たまにはサボって遊びたいから二人はその教科を取ることにした。意外にも人気のあるらしく、1日に2コマあって広めの抗議室を使うとも聞いていた。

「‥モノノケ学?」

「うむ、某はそう聞いている」

「なんとまぁ‥オカルトな」

「しかし単位が足りない者にとっては有り難いだろう」

「そうだねぇ‥俺様つまんなかったら辞めよ」

「人気が高いらしいぞ」

「それはそれ、俺様はオカルト系嫌いだもん」

そう言いながら午前のコマは高等部用らしい、流石に初めての同級生たちは戸惑うようで人数が少なかった。満席であってもそのほとんどが三年生で、既に留年している先輩や同級生なら長曽我部・毛利や先輩の竹中・豊臣までいた。‥生徒会の人間がいるなんてと佐助は驚いていたのだ。

「‥二年生の生徒は初めまして、三年生の生徒は今年もよろしく、椿元ユエです」

入ってきたのは小柄な女性だった。色が白くて黒髪で、マイクの音量を調節しながら自己紹介を始める。

「!」

「‥人気が高いというのは先生のせいかもねぇ」

「居眠りや他の教科を進めても構いません、が、毎回配るプリントを提出してもらいます。教科書を見ればわかりますが、出来ればこちらに集中していただけると有り難いです」

そりゃあこんだけ弛くて単位が貰えるなら興味なくても出席するわなぁと佐助は苦笑する。先生は名簿を見ながら出席を取り始めていて、佐助はそんなユエを見ていた。

「猿飛、佐助さん」

「はーい、よろしくねぇ」

手をあげてアピールするとユエは此方を見て一瞬驚いたように瞬いた。不自然なソレはすぐに隠されてしまったが、佐助は違和感を感じて首をかしげる。

リィンと鈴がなるような違和感


(猿飛、佐助)(なんとまぁ‥生き写しのようだ、頼むから思い出してくれ)


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