07 そうこうしているうちにメンズコーナーに到着する。彼は好きな系統が決まっているらしく本当にさっさと服を決めてしまっていた。あれやこれやと選ぶというよりパパッとこれとこれ!みたいな選び方はなんとなくだが羨ましいと思った。 「早いねぇ」 「少ない予算でやりくりしてますからね」 「そうだよね、でも選んだ服はどれも佐助に似合うと思う」 「まあね」 休憩を挟む前にレディースも見に行けそうだねと彼が言うから少し覗こうかなとフロアを移動する。混み合っていたが私の好きなブランドは思ったよりも人が少なかった。シンプルで時々可愛いが揃うお洋服だった。 「ユエさん、これは?」 「あ、可愛い」 「これと、これ!」 濁した抹茶のようなグリーンのニットワンピース。薄手の長袖だから秋も冬も着られそうだとまずキープすることにした。ドルマンのトップスも濃紺で可愛らしいとキープは全て彼に持たせることにした。うるさくないフリルやパールが付いていたりして、なかなか良い品ばかりを彼は提案してくるのだ。3着決まり、レジに持っていくと店員さんはニコニコしていた。 「彼氏さんですか?」 「弟みたいな感じの子です」 「あら、失礼いたしました。お客様に似合いそうなモノばかり選ぶので」 「そうですね、私も驚いています」 袋を受け取り店を後にする。次は?なんて彼は聞くが私の買い物は此処だけで良かったので、首を横に振った。 「あれ、もっと見るのかと思ってた」 「好きなブランドしか着ないから」 「俺様もだけど、でも他にないの?」 「うーん、どちらかと言えば本屋さんに行きたいかな」 「じゃあ、そっちに行こうよ」 本屋さんの方が時間が掛かり沢山購入してまた彼に驚かれた。1度、荷物を車に置いて休憩にしようと提案し抹茶の美味しいカフェに入ることにした。あれこれ悩みながらも決めて席に着けば彼の注文した抹茶蜂蜜が気になり、ひと口交換しようと私のグラスを差し出した。 「はい」 「ん、ああここは外れがないなぁ」 「よく来るの?」 「本屋さんの近くだからね、ソフトクリーム冷やしおしるこはよく頼む」 「……甘い」 そりゃあ、ミキサーにかけたお汁粉だからねと笑いながら彼にグラスを返した。甘ったるいものが飲みたいときに最適な飲み物として私の中では上位に位置するのだ。 「あとは、食料品?」 「私、料理しない」 「俺様が作りましょうか?」 「…2人分、作ってくれるなら」 「もちろん、ユエさん1人で食べさせるようなことはしないよ」 食料品を見て回るのは久々で、調味料すら使えるのか怪しいと言うと彼は本気で「いつも何食べて生活してるわけ?」と問うた。ご飯なんて駅のコンビニで事足りるしドラックストアで水は買うし、食料品を回る意味なんて私には皆無なのだ。彼は本気で私の心配をしてしまったようで、バランスよく食べないと身体が保たない云々米食え云々色々言っていた気がするがよく覚えてはいなかった。 「さて、今日は時間が少ないので簡単なモノしか出来ないけど」 「カップラーメンにする?」 「そんなもの、俺様の目が黒いうちは許しません」 「3分で出来るのに」 孤食は辛いからね ご飯を作り一緒に食べて、彼は9時に帰って行った。彼のご飯はその辺の主婦に負けないぐらい--とりあえず私の母親よりは美味しかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |