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15(猿飛+石田)
付き合っていると誤解されたままで良いと言った大谷さん、石田くんとの噂が消えるまでという期限付きで彼氏っぽく?なってしまった。学校という狭い箱庭ではあるがここだけでならば私には彼氏がいるという風になってしまうのだ。私の彼氏は年上の和服の似合うオジサンなのだ。

「…おバカさん」
「ううっ」
「本気ですって告白するチャンスだったんじゃないの?」
「い、今更言えなくなっちゃったよぅ」

お昼休み、佐助くんを呼び出して屋上で二人、体育座りで話し合っていた。相談するのももう何回目だろう?佐助くんは事の次第を説明していくにつれて段々苦笑いになっていた。どうしようもないねなんて溜め息をつく佐助くんに、どうしようと泣き付いた。

「石田って今、呼べる?」
「え?石田くん?」
「そ、ユエちゃんは雇い主のこと本気で好きなんだろ?」
「う、うん」
「誰のこと好きなの?」
「大谷さんのことが好きなんです!」
「他人の恋路に手を出したくないんだけどね、ユエちゃんは特別だからね?」
「さ、佐助くんっ」

そして、何の事情を知らずに呼び出された石田くんは私の隣に佐助くんがいて嫌な顔をした。真田の世話人がなんの用事だ、なんて棘々しかった。

「あの、」 
「ほらユエちゃん、さっきのもう一度言ってごらん」
「えっ?」
「…なんなのだ」

さっきのって大谷さんのことが好きだってことだよね?とアイコンタクトしたら、そうだよとアイコンタクトが返ってきた。石田くんに言うの!?と目を真ん丸にしていれば、いいからと背中を押される。

「あ、あのね、石田くん」
「なんだ」
「大谷さんのことなんだけど」
「刑部になにかあったのか?」
「あー、むしろ、私にあったかなぁ」

さっさと話せと催促してくる石田くんに佐助くんは何やら口出しはしないようだった。なんだこれ、私に事の次第を話ささせるつもりかと当事者ながらに思った。

「--と、言うわけでして」
「くだらん、ユエがさっさと刑部に想いを伝えれば良いだろう」
「石田くんとの噂が消える前に伝えられなくなってしまったと申しますか」
「何故、そう思うのだ?」
「は?」
「だから、何故だ?告白に今更もなにもないだろう」
「相手は冗談だと思ってるんでしょ?撃沈したらユエちゃんは職も恋も終わっちゃうんだよ?」
「た、立ち直れない」
「ほら、泣かせた」

想像しただけで涙で視界が潤んだ。困った表情の石田くんは「わかった、私に出来ることがあれば言え」と溜め息混じりに言った。

「ふたりきりはなんとなく気まずいので遊びに来る回数を増やしてください」
「そんなことで良いのか?」
「うん、お菓子作って待ってるから」
「わかった」

また何かあったら連絡をしろと言って石田くんとは別れた。佐助くんからは「旦那に菓子を作ってきて」と約束させられた。そんなことで良いのならいくらでも!と私は佐助くんに抱き付く。


思わぬ救世主

噂の石田くんに協力して貰えるとは思いもしなかった。


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