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03(大谷)
「先生、左近くんから聞いたんですが」
「やれ、賭博でも聞いたか」
「いえ、前世では先生と私は仲良しだったと聞いてます。だから先生は私に良くしてくれるんですか?」

休み時間に聞いたのだ。私と先生は、私が部屋に入り浸る程に仲が良かったのだと。なにやら面白くない気分になって先生本人に聞いてみることにしたのだ。嬉しい筈なのに左近くんは仲を探るように聞いてくるんだもの、記憶がない私としては面白くなかった。

「前世も今世も関係なかろう、ユエはユエよ」
「だって、初めから名前を知っていて司書室に招いてくださって--嬉しかったですよ、でも」
「聞き分けが悪いのは悪い癖よ、ユエは可愛い生徒である、それは変わらぬこと」
「そりゃあ、そうなんですけど、ふふ、先生も可愛いとか思うんですね」
「我を気味悪がらない故、ユエは特別よ、トクベツ」
「気味悪がらない?先生は気味悪いんですか?」
「我の病は前世の業、この目を身体を気味悪いと言われたなァ」
「そんなことないのに」

白黒反転した目も身体の痣も私はそれが先生だからと納得して--そんなこと思いもしなかった。先生の噂で良いものは聞かないけれど石田先輩も左近くんもそんな先生を疎んだりしていない、そういえば姉様もそうだ。というか周りの私を知る皆は先生を疎んだりしていない。怖がる人はいるが嫌ってはいないみたいだ。事務員の黒田さんだって嫌ってはいない様子だった。先生はそんな黒田さんで遊んでいるみたいだけど。

「して、仲良しなのが気に入らないと?」
「いいえ、でもそれの理由が前世絡みだったとしたら面白くないのです」
「絡んでないと言えば偽りになろう、顔見知りだった故つい贔屓目にしているのは真よ」
「もし、敵対していたら?」
「はて、我らとユエが--雑賀が敵対とな」
「契約者だったんですよね?もし徳川先輩についていたらきっと今みたいに仲良くしてくれませんでしたよね?」
「誰が、話をした」
「黒田さんですよ?お前さんらが石田先輩についたのは不覚だったと言っていました」
「暗め、余計なことを」

先生の顔が険しくなったところを見ると本当のことなのだろう、私は少しだけ寂しくなって俯いてしまった。

「ユエがあちらに行こうがなんだろうが、我と主は今世で仲良しこよしになったであろうなァ」
「何故ですか?敵対していたのに?」
「それを我の口から言わせるか、ほんに意地が悪い」

先生は教えてくれなかったが、たらればの話は面白くないと言う。先生が不機嫌になってしまうのはなんとなく嫌だったから私はそれ以上追求するのを止めることにした。ごめんなさいと謝れば多感な年頃故反抗期と思っていると先生は笑った。

子供扱いされたみたいで面白くないけど

「大人の台詞ですね」
「我は大人よ、オトナ」



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