13 二人きりの買い物、初め(たしか中2のときだったかな)はとっても緊張したんだけど、今では本当の兄弟みたいだ。(兄弟‥俺様なんだか切なくなってきた) 「猿飛くん、なんだかクッキーばっかりじゃない?」 「ユエはある程度作れるんだから、応用編だよ」 市松模様だとかなんだとか、真田くんが見た目を重視するかなんて分からないのに‥変化球かなと思いながら首を傾げてしまう。しかしクッキーは日保ちがするしサクサクだから作るのも食べるのも好きだけど、ここまでクッキー漬け?真田くん怒らないといいけどな。そんなことを思いながらカゴに小麦粉やら砂糖(少量でも甘く感じるパ〇スイート)(高価<真田くんの身体なのね)を入れている。今夜は帰ったらパウンドケーキとクッキー生地(冷凍保存が利くからね、同時進行に近い)を作る予定だ、生地にはドライフルーツにプラスして角切り人参をいれてほしいと言っていた。 「(ママン‥真田くんは人参が嫌いなのですね)」 「あとはー‥ああほら、人が多いんだからキョロキョロしないの」 明後日の方向を見ていたらキュ、と手を捕まれる。ビクッとして振り向けば意地悪く笑う猿飛くんがいた(カゴを持っている姿がよく似合う)(流石はオカン) 「ユエ、」 「な、に?」 「今だけは、さ」 「?」 ニッコリ笑う猿飛くんになにやらゾワゾワとした悪寒がした。(この笑顔はね怖いんだよ苦手なんだよ) 「俺様を名前で、呼んで」 「!」 「つかさー竜の旦那ばかり名前で呼ぶのは、贔屓だよねぇ」 「だ‥って、」 「あとから仲良くなった鬼の旦那のことなんて“チカちゃん”だしさ」 猿飛くんはヒソヒソ話が凄く上手だ。ベーキングパウダーの缶を弄びながら、ん?と顔を覗き込んでくる。 「さ、‥さ、さすけ‥くん」 「良くできました、いいこ」 優しく耳元で囁かれて、顔が赤くなるのを意識してしまう。呼び慣れてないし今更という気持ちが強くて、なんだか調子が狂う。 「‥出来ればさ、旦那のことも呼んであげてね」 「真田くん?」 「突然に俺様だけって言うとさ‥拗ねちゃうでしょ?」 「ふふふっ‥そうだね」 「(竜の旦那は吃驚するだろうけどな)」 佐助くんと呼ぶのも幸村くんと呼ぶのも、暫く緊張すると思うんだ。でもきっと気長に待ってくれるかな。 「さーて、これくらいかな」 「‥さすけくん、手、」 「え、あ!ああこのままじゃあお会計できないね」 俺様うっかり!と笑って手を離してくれた。温かなぬくもりがサッと引くのを少し寂しく思いながら、キュと服の裾をつかむ。すると猿飛‥じゃなくて佐助くんはなんだか嬉しそうに切なそうに頬を緩ませた。 甘えっ子な所がとても愛しいんだよ、 お会計して、荷物を詰めている間、心の中では何度も何度も二人を名前で呼ぶのを練習していた。 --- 「遅かったでござるな」 (さぁ、勇気をだして!) 「さな‥ゆ、ゆきむらくんっ」 「なっ‥なななっユエ殿!?」 「えへへ、少しずつ慣れてくからね!」 「そうそう俺様達付き合い長いし」 「‥そ、そうでござるな!」 「(すげぇ‥耳まで真っ赤だ)」 「チカちゃんも!」 「あ?」 「もとちかくんって呼べるように頑張るね!」 「お、おう!」 いつか マブダチっていう関係になれますように! [*前へ] [戻る] |