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柴田くんと私
「あ。おはよう、柴田くん」
「おはようございます、ユエ殿。顔色が優れませんが?」
「あー、ちょっとね、寝不足なのよ」
「どうか、ご自愛を」
「ありがと。ふわぁ」

朝から柴田くんの顔をみたら何故だか安心感を覚えて欠伸を噛み締めた。ここ最近は左近ちゃん不足もあって眠りに入りにくい日々を過ごしている。ああ、眠い。きっと彼女とかとうまくやっているのだろう、そう考えたら何やら面白くなかった。

「ユエ殿?」
「柴田くんは22時頃何してる?」
「その時間でしたら読書をしているかと思います」
「柴田くんらしいや、なんでもないよ」
「左様か」
「うん、ふああ、ふああ」
「保健室まで同行しましょうか?」
「ううん、大丈夫。ありがとう」

柴田くんは一生懸命に敬語を薄くしてくれている。無理はさせたくなかった為、素でいいよとまた欠伸を1つ。

「友達に敬語使っちゃう柴田くんは半端なく紳士だよねぇ」
「紳士かどうかはわかりませんが、これが私の素なので」
「うん、うん、それでこそ柴田くんだわ。あ、左近ちゃん今日は風邪でお休みするって連絡来たよ」
「左様か、あいつらしい」
「あ、やっぱり嘘だって分かる?」
「最近の言動から考えて女性がらみでしょう、それでユエ殿は構わないのですか?」
「なんで私が?」
「あいつと仲が良い女子生徒を睨む癖がおありかと、外に女を作ったら如何に」
「睨んでた?微笑ましいなぁって見てただけなんだけどな」
「気付いていないのは当人たちだけでしたか、忘れてください」
「それに、私は左近ちゃんの彼女じゃないよ、オトモダチだもん」
「そう、なのですか?」

不思議そうに首を傾げた柴田くんが可愛らしくて撫でてしまいそうだったが、そんなことして喜ぶのは左近ちゃんぐらいだろうとすぐさま手を引っ込めた。柴田くんも左近ちゃんもお友達だよと言えば何故だか柴田くんは私の手を取り「有り難き幸せ」とか言ってるし。まだ教室には生徒が少ないから構わないのだけど勘違いされそうだよ柴田くん。

「柴田くん、以外と手が冷たいんだね」
「も、申し訳ありません」
「いや、あふぁ、ごめんごめん。そうじゃなくてね、意外だなぁって」

--左近ちゃんはあんなに手が温かいのに。その言葉を飲み込んで離れていった柴田くんの手が少しだけ惜しく思えた。触れていた指先が冷たかったはずなのに甘い熱を帯びているかのように一瞬、熱かったのだ。欲求不満の気はないはずなのに、胸が痛んだ。仕方ない、これ以上柴田くんとお話しするとボロが出てしまうと思い、彼のカーディガンをクッと引っ張った。

「柴田くん、HRまであと30分あるからさ、少し居眠りするね」
「先生が来たら知らせます、休んでください」
「ありがと、よろしくお願いしますね」

--左近ちゃんに会いたい

あ、いま、一瞬だけ言葉遣いが昔に戻ったわ。


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あきゅろす。
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