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09

前略 天国のお父さんお母さん
わたくし、竹槍でラスボス間近です。

「でもどうして長曽我部くんち?」

「‥竜の野郎が溺愛してるオンナってのに興味があってな」

「竜?‥ああ、政宗のことか」

なんだそんな理由かと私はクッキーをくわえる。溺愛ってなんだよとか思いながら(まだ持ってたのかという突っ込みは誰もしてくれないけど)長曽我部くんも詰まんでモグモグしていた。

「甘いな」

「だって真田くん専用だもん」

「幸村ぁ?」

「甘味同盟!」

「‥‥そうか、」

甘い甘いといいながら缶珈琲を渡してくれた。長曽我部くんはベッドに座っていて、私はソファに腰を下ろしている。正直、二人の間には距離がある。誰かの--特に男子の部屋に上がり込むなんて久々で(中学の頃はテストの度に真田君ちか猿飛君ちに集まっていたけど)いささか緊張していた。政宗の部屋では必ず二人で隣り合っていたから、この距離感がまた緊張するんだなぁと染々してしまった。

「緊張してんのか?」

「だって‥(もぐもぐ)」

「まぁ、いきなり鬼のすみかだもんなぁ‥悪かったよ」

「どうして謝るの?てかどうしていきなりお宅訪問?」

「‥‥椿元と、友達になろうと思ってな」

「(友達!?)」

長曽我部くんは何だか言いにくそうだった。どうしてかなと首をかしげるも私の頭じゃあ解読は出来なさそうだった。(男子の考えってよくわかんない)

「竜んとこの奴、なんて野郎共に反対されちまうんだけどよ」

「私は初めから竜とか鬼とかよくわかんないから、気にしてないよ」

「!」

「政宗とは家族だし長曽我部くんと友達になっても関係ないじゃん!私はわたし!」

長曽我部くんの吃驚した表情は初めてみた。それに政宗の部屋より長曽我部くんの部屋の方が安心する。(気がする)

「じゃあ、今日から友達に!」

「ああ、宜しくな。つば‥ユエ」

「!」

えへへと恥ずかしそうに笑ってしまった。名前で呼ばれるのってなんだか嬉しいかもしれない。

「長曽我部くんは、独り暮らし?」

「名前、」

「ん?」

「名前で呼べよ、ユエ」

俺たち友達だろ、と言われて肩が上がる。名前で?名前で、‥なまえ


「もと、ちかくん?」

「(一瞬忘れてたな、こいつ)そうそう、長曽我部なんて呼びにくいだろ?」

「名前も恥ずかし‥‥あ!」

「どうした?」

「チカくん!」

「‥‥もとちかの略か?」

「ちょうそかべ、の略かもよ?」

すぐにチカくんの大きな手が延びてきて、本当に面白いオンナだと頭をワシャワシャされた。(なんて豪快な人なんだ!)

「遅くなる前に送ってくぜ、竜の野郎が学校にいるんだろ?」

「あ!そうだったー」

「試合だっつってたからな」

「(あれ、実は仲良しなの?)」

元来たように、バイクを走らせてくれた。鬼のすみか、覚えておけよと言われてビックリしたけど、そんなことよりよくよく考えればチカくんに抱き着いてるんだよね、安定するとはいえ‥深く考えてたらすっごく恥ずかしくなってしまった。

「‥ありがとう、チカくん」

「また明後日な、ユエ」

大きく手を振って別れた。すぐに政宗からメールが入ってそっちに向かったけど、チカくんの背中とかおっきくて、きっと政宗より広いんだろうなと思ったら赤面してしまった。

鬼のすみか、学校より徒歩10分程、

コンビニが途中にあった!お土産持参で行けるんだね!

独り暮らしじゃなくて両親は上(大家さんらしい)に住んでるんだって!後で教えてくれた。

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