01
「!」
ピンチ、だった。
一本遅れた電車はラッシュで、身動きが取れなくなってしまった。荷物はなんとか抱えているし傍には手刷りがある、なんとかしがみついて立っていられるのだが、腰の違和感に背筋が凍る勢いだった。
「‥、‥‥」
なんとか、身動きして振り払いたかった。息を殺していると‥ふと、見知った制服を見つけたのだ。
「(男子、だけど‥学年分かんないけどっ)」
同じ学校に通う生徒だ、助けてくれるだろう背が高くて銀髪の不良よ!(こういうとき、女子って便利だー)
「あ"ん?」
ギュッと斜め前の生徒の服をつかむ。彼は背が高いため掴むのは腰辺りなのだが、くいくいと引けば此方を向いてくれた。
た、す、け、て、と口をパクパクさせて見上げる。やば、涙出てきそうだ。
「‥‥‥」
パチリと目があった彼は、とても怖そうで(人選誤った)でも、ついと後ろに視線を向けてくれた。
「おい、オッサン」
ぐわ、とスカートの中に入り込んでいた手を掴んでくれた。そのまま力を込めたのか、痛い痛いという声が後ろから聞こえた。
「なぁに、ヒトのオンナに羨ましいことしてんだよ」
「ひっ」
「‥っ」
ドスのきいたその声にこちらまで息を飲んでしまった。あれはビビるだろ、誰だって!
彼は駅につくまでそのまま私を壁側に移動してくれた。
「‥あり、がとう。助かりました」
「あん?いいってことよ」
「あの、名前、」
「‥‥は?」
「名前聞いてもいいですか?同じ学校ですよね、」
「‥‥長曽我部、元親」
「ちょうそかべ、さん?」
なんだろう、私を見て溜め息ついてる。
「‥あんた、椿元ユエだろ?」
「えっ?」
「キティ、ってあだ名の」
「あれは!政宗が勝手に!」
「(本当に仔猫みてぇ)」
「あの、」
「ちなみにな、二年間同じクラスだ、椿元」
長曽我部君はワシワシと頭を撫でて遅刻すんぜと歩き始めた。
「(同じクラス!?)」
それは失礼なことをした、それにしたって長曽我部君ってあまり学校に来てないような気がする。(だって私は今のところ皆勤賞だ)
「(あとで猿飛君に情報もらおう)」
あまりにも知らなすぎて
ちょうそかべくんって言いにくいな。
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