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パルス


少女は“木漏れ日”から帰ってくるといつも上機嫌だった。両手一杯に本を抱えて、運が悪いと三日ぐらい会わない日が続いたりする。

「ユエ、風邪をひきますよ」

「‥ぱるす、さん?」

英和辞書を片手に日本の神話を読んでいたらしい少女は音井助教授がいつも使用しているソファで寝こけていた。うっかり見つけてしまった<A-P>パルスはお節介と知りながらも声をかける。

「‥面白い、ですか?」

「‥うーん、悪と正義がはっきりしてる、かな?」

それは面白いんですか?と、もう一度、同じ質問をすると少女は考えるように首を傾げてしまった。困らせるつもりはなかったとパルスは頭を下げる。

「あれ‥久しぶり、ですよね?」

「ええ、三日ほどです」

この前はカルマさんとも同じような話をした気がしますと苦笑して、少女はパルスに手を伸ばし頬に触れる。

「なにか‥?」

「‥触れたかった、だけです」

久々だったから、かと言って頬にキスをする習慣はなかったから、どうも表現の仕方がないよねと二人は顔を見合わせた。


「(キスなんかされたら心臓止まる!)」

「(手は出せない‥今はまだオラトリオに勝てる気がしないからな)」

ほんの少し話をしただけなのに、パルスは満たされた気がするのだった。



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あきゅろす。
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