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いつかの夜*
まるで 心に開いた穴のようにその存在を主張する。舌先に刺さった金属は私立だからなんとか許して貰えたのだ。あまり良い顔はされないが、給料に響くような感じではないようだ。

「痛くないんか?」「さあ、忘れたわ」

「ここはどうするんじゃ?」

「まだこのままだよ、もう少ししたら‥ひとつゲージを下げる」

「痛くないんか?」

「痛いに決まってるでしょ、貫通とそのあと3日間はズキズキ」

「そんなんなら止めればよか」

「痛みがあるからこそ止められないんだよ、気が付いたら裂けてるかもね」

そう言ったら、その夜には少し痛みを与えられた。

「痛い方が依存するんじゃろ?」

「なにそれ、アンタに依存しろって言ってるの?」

「噛まれるの、好きなくせに」

「大好き、特に仁王は遠慮ないからダイスキだよ」

「他の男にもさせとったんか‥いけない子じゃのう」

「った、‥んふふ、きもちいい」

血が滲む、内出血する、いっそ噛み千切られたい、痛いのに気持ちいい、おかしいのは分かっているのにまるで麻薬のようだと仁王の髪を撫でた。

「あーあ、仁王以外に見せらんない身体になっちゃった」

「見せんでよか」

「仁王にされるから気持ちいいのかもね、あーあ‥仁王に棄てられたらどうしようかな」

「‥‥捨てんよ、だって、ユエちゃんは俺の御主人様じゃろ?」

グイッと首を上げれば彼が誰のモノであるかの証が見えた。そう、仁王と私は契約した仲なのだ、左手薬指に光る輪よりも首にはめられた輪を望んだ彼、その彼は主の命令で主に牙を向けていた。

「あと、もう“仁王”って呼ぶの止めてくんしゃい」

「はいはい、旦那様。雅治って呼ぶの慣れてないだけだよ」

彼が望んだ首輪、私が望んだ痛み、普通首輪をすべきなのは私の方なのかも知れないけれど--残念ながら、目の前の彼はなかなかに“素質”を持った人間だった。首輪から繋がれた鎖を引っ張れば、私を見上げる瞳には悦が含まれていた。

「マサは私みたいにただ痛いのが好きじゃない、でも苦痛が好み、イチバン我が儘だわ」

「ん、ん」

「あんなに飄々として、キラキラしていた仁王くんが‥こんな淫らでまさか同級生だったオンナと籍まで入れて御主人様とか呼んで、気持ちよくなっちゃうんだもの。人生って分からないわね」

「ユエちゃ‥」

「でも、好きだから、許しちゃう」

「だいすきよ、旦那様」

蜜月中!

(私たちの蜜月は終わりを知らないのかもしれないけどね)


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あきゅろす。
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