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私の、負けです。
「ようやくくっついたのか」「は?」

同じく母校で教師をしている同級生の柳くんが朝いきなり声を掛けてきた。いつもなら挨拶ぐらいなのにいきなり--

「アイツから何か聞いてたの?」

「もう何年になるやら--それ程前からお前について相談を受けていた。良かったな」

「バカだね、アイツ。もっと早く言えばいいのに」

「彼なりに悩んでいたんだ、そう言うな」

柳くんは本当に先生らしいなと思う。しかし仁王が悩んでいたなんて知らなかったなと溜め息をひとつつく。今日の朝はにこやかに送り出してくれた、あの仁王が悩んでいたなんて

「あ、一限の準備しなくちゃ」

仕事モードに入ればスッキリと仁王の顔は忘れていた。仕事が終わり携帯を開けば仁王から夕飯は出来てるというメールが入っていた。

「‥アイツ、マメなんだ」

「好かれたい衝動で必死なんだろう」

「ありがとうね柳くん、仁王が幸せなら良いと思うよ」

「ユエも幸せにならなくては仁王が悩むぞ」

「そうだね、まあ悪友が恋人になるだけの話だから‥帰ったら仁王に説教するわ」

「程々にな」「分かってるわ」


帰宅すれば、エプロン姿の仁王がニコニコして迎えてくれた。

「仁王、無理しないでよ」

「しとらん、ユエとずーっと居られるのが嬉しいだけじゃ」

「そう、でも‥ううん。ま、好きにやって」

「好きにしとる」

仁王の料理は好き、エプロン姿の仁王も可愛らしいと思った。しかし私の苦手な食材を知っていてワザと入れるのは止めて欲しい。

「避けるんじゃなか」

「嫌いなんだもん」

食べないとダメな雰囲気に仕方なく食べることにした、苦手なだけで食べられなくはないのだが仁王は嬉しそうにしてくれたから良しとした。

「ユエ、嬉しか」

「そう?仁王の基準がよく分からないわ」

ソファでゴロゴロしてる時間がイチバン安らぐ、仁王のことを“好き”でいていいのだと思うと肩の荷が降りたような気がするのだ。

「(私も悪友とか言い訳でもしてたのかな)」

柳くんにはバレているだろう、参謀と呼ばれた友人を思い浮かべて仁王の額に唇を押し付けた。

「今日は甘えっこじゃのぅ、ユエちゃん」

「自分に素直な行動だと思う。でも、結果オーライ、悪友も楽しかったから」

「‥明日は休みじゃろ?」

「まあね、学生と同じだけ休みがあるみたいだから楽しい」

「その、‥すこーしばっかし時間を戻さんか?」

「イリュージョンって時間を戻せるの?エスパー?」

「そういう意味じゃのぅて‥、せ、制服、残っとるじゃろ?」

「‥‥ああ、そういう意味ね。中学も高校もあるよ」

「全部、やりたい」

「いいよ、仁王だし」

「ユエ」「ん?」


「好いとぉよ」と囁く

上機嫌な仁王はさっそく制服を部屋に引っ掛けていた。


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あきゅろす。
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