ち 01.優先順位(黒瀬) ヴィナトーレは狩りを行っていた。無節操で親知らずな吸血鬼共を始末するのが彼らの仕事。今は私も彼らに手を貸している。そう、裏切りと言われても仕方がないのだが、親知らずな奴らのせいで、こちらが被害被るのは勘弁してほしかった。 古い世代仲間のヒグレに言えば、「やっちまいな」などと、どこの極妻だよと突っ込みたくなる程豪快に言ってのけた。 ロンドンは肌寒くちょうどいい。それでもやはり、故郷の四季が懐かしく感じる日もある。こうやって、狩りをしていると“彼”に出会う前の生活を思い出して懐かしむ時間が増えた。 「‥もういいだろう、戻るぞ、ユエ」 「はいはい、黒瀬はセッカチだな」 「わざと片言にしてるだろ?」 二人とも血に濡れた。見事に今日の獲物は全部親知らずだった。今日は私のレンフィールドが何人か負傷したと聞いている。 「早く戻らなくては」 「今日は数が多かったな」 バイクに跨がってエンジンをかける。後ろにグッと重みがかかり振り向くと、黒瀬が後部に乗っていた。 「‥‥なに?」 「レイジさんの屋敷まで乗せてくれ、遅刻しそうだ」 「‥今日は用事があるんだけど?」 「頼むよ、朝イチにスーツを取りに行く約束でさ」 黒瀬は降りる様子がなく、ここまで強引な彼を私は見たことがなく眼を丸くしてしまった。 「‥後部にヘルメットがあるわ、捕まりたくないんだから早くして」 「助かるよ」 「‥湊のお嬢様に叱られるアンタを見るのも一興なんだけどね」 意地悪く笑うと重みが掛かり、腰に黒瀬の腕が回る。自分のレンフィールドよりも人間を優先するなんてちょっと信じられなかったが、通り道だから許せ、可愛いハニー共よ! 「(さて、飛ばしますか)」 優先順位 早く帰ってハニー共の怪我の具合を看てやらなきゃ。 ←→ [戻る] |