妄想SS/short
マタアイマショウ(橘×千歳)
俺が千歳を傷付けた。
アイツから大切な物を奪った。
だから俺はテニスと千歳を捨て、オヤジの転勤を機に東京へ行く事にした。
転校前に千歳が入院してる病院へ花束を持って見舞いに行った。
脳への衝撃を考え、しばらく入院して安静にすると聞いていた。
部屋に入る。
個室の病室は広く感じた。
この部屋のベットで寝ているのは誰?
俺の知らない弱ってしまった千歳…
「オヤジの転勤が決まったけん、来月から東京へ行くばい…」
「そうか…」
しばし沈黙が流れる。その沈黙が辛かった。
千歳は俯いたまま、俺の顔を見ようとはしない。
きっと、それでよかった。
千歳の顔を見たら決心が鈍ってしまうから…
それに、腫れた目許を千歳に見られたくもなかった。
「桔平は、本当に俺から大切な物ば取り上げるたい…」
「だな…」
他に答え様がなかった。
俺は本当に千歳から大切な物を取り上げたから。
「行くなとよ。俺の側に居てくれ…君ば愛しとー…」
そういいながら涙を流す千歳を俺は抱き締める事が出来なかった。
意外な言葉に胸が締め付けられる。
「けじめたい…」
「そぎゃんけじめ、いらん。」
解ってた。これは俺のエゴだと言う事くらい。
だが、千歳から大切な物を奪っておきながら、罰の与えられない自分が許せない。
「千歳、さごたるら…」
千歳の姿を見る事が出来なかった。
涙が溢れて止まらない。
「桔平、また会おったい…」
病室を出ようとした時に千歳に言われた言葉が辛くて仕方がなかった。
いっその事、突き放してくれれば楽なのに…
もう一度こん手に愛する君ば抱きしめたい―――
この想いは増すばかり。
千歳、愛しとー。
また、コートで会おったい。
千歳の目が治るまで、何年でも、何十年でも待つと…
Fin...
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