妄想SS/short
雨の日の俺様。(忍足×跡部)
雨の音で目が覚めた。
今日は雨かと思うと憂鬱な気分になる。
雨の日は妙にセンチメタルになる自分が居た。
「忍足…」
「ん、何?」
昨日泊まっていった忍足侑士と共に目が覚めた。
忍足の甘ったるい声と雨の日特有の重たい空気。
「携帯、取ってくれ。樺地に電話する…」
「えぇよ。」
こんな日じゃ流石に練習は出来ない。
レギュラー陣はともかく、他の部員達200名全て練習出来る程のスポーツジムなど学校には無い。
レギュラー陣は…午後に召集掛けるとするか。
携帯の呼び出すコールと雨の音が混ざる。
それが非常に不愉快で苛立ちを覚えた。
『はい…』
「おい樺地、今日の練習は無しだ。だがレギュラーだけは午後、部室に集めろ。」
『ウッス。』
樺地に用件だけ伝えて電話を切った。
また耳障りな雨の音しか聞こえない…
「跡部、今日はどないしたん?」
「あ?何でもねぇよ…」
「嘘や。めっちゃ機嫌悪いし…夕べ激し過ぎた?それとも生理かいな?」
「ッ、死ね!変態野郎!!」
「ぅごっ!?」
忍足の顔に思いっきり枕を投げ付けてやった。我ながらいいコントロールだぜ。
「酷いわ…けど、なんで自分そないに機嫌悪いねん。」
「テメェに関係ねぇ…」
弱い自分を誰かに見せるのが嫌だった。例えそれが恋人である忍足にでも。
「関係ある。」
「は?」
「俺は跡部の全てが知りたい。」
「ラブロマンスの映画観過ぎだ。ボケ。」
窓の外に視線を向ける。
降り続く雨を見て妙に悲しくなる。
悲しくのに理由なんかない。けど、全てが悲しい理由になっちまって、結局、全てが悲しい。
「雨、さっさと止まねぇかな…」
「雨なぁ…」
溜息混じりに呟く忍足に視線を向けたら、奴の胡散臭い伊達眼鏡に窓の外の雨で濡れた世界が映っていた。
「忍足…」
「ん?」
「その胡散臭ぇ眼鏡、外しやがれ。」
気分が晴れない雨の日。
横には微笑んでくれている恋人。
「跡部は小雨ゆうより夕立やね。」
「アーン?」
「けど俺はな、気まぐれな夕立も嫌いやあらへんよ。」
つくづく馬鹿だと思った。
忍足の言葉も、そんなコイツの言葉に不覚にもドキッとした自分も。
「なら、お前はハリケーンだ。」
「は?なんでや…」
渋々、眼鏡を外しながら首を傾げる忍足に一人笑った。
なぁ、忍足。
この雨も、俺の憂鬱な気分も全て…
ハリケーンみたいなお前の笑みで吹き飛ばしてくれよ。
End.
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