妄想SS/short
ライバル。(桃城→海堂)
「お前が好き」
なんでこんな簡単な一言がアイツには言えねぇんだ…?
本当はすっげぇ好きなのに近付けばアイツの事、茶化しちまって、怒らせて喧嘩しちまう…
わからねぇなぁ、わからねぇよ…
自分の事なのに、わからねぇ。
なんでアイツには優しく出来ねぇんだ…?
部室へ向かいながら今日もそんな事を考える。
最近、アイツの事を考えねぇ事の方が多いくらいだ
【おっ、海堂だ。】
レギュラージャージに着替えて部室から出て来た海堂が視界に入った。
「よっ、マ・ム・シ♪」
本当は「海堂」って言いてぇのに…
海堂は俺に呼ばれて不愉快だと言わんばかりに眉間にシワを寄せて俺を睨む。
本当は…睨んで欲しいんじゃなくて…
「ククッ、相変わらず怖ぇ〜。」
微笑んで欲しい…
お前が普段は誰にも見せねぇ様な…微笑みで。
「…。ケッ、下らねぇ。さっさと着替えて部活に参加しろ。」
怒らすだけでもいいから、俺にお前の感心を引きてぇのに…
お前は俺と喧嘩するよりも部活してぇんだろうな。
だってよ、お前の視線は、もう俺にはなくて、先に来てウォーミングアップをしてる先輩達。
「はいはい。わかったよ。」
「やけに今日は素直だな。まぁ、いい。」
そう言ってラケットをフェンスに立掛けてウォーミングアップに行くお前の後ろ姿を視線で追う。
お前の姿を見てるだけで涙が出そうになっちまって、急いで部室に逃げる。
一年の頃からお互いライバル視してた。
俺にとっても海堂はライバルだけど、好きになっちまった。
好きなのに、優しく出来ねぇで茶化しちまう。
好きだから素直になれねぇ。
好きって伝えてぇけど…
多分、これからも出来ねぇと思う。
けど…
お前が居るから強くなれた。
お前が居たから今の俺がある。
せめて、この想いが届かなくても
お前にとっても、俺がそういう存在であればいいと思う。
fin...
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