妄想SS/short
奴をフリーにするな!!(佐伯→黒羽前提)
『おぉロミオ、貴方はどうしてロミオなの?』
「ジュリエット…」
これは、去年の話だ。
ロミオを演じてるのは我等が六角中の色男、佐伯虎二郎。
んで、ジュリエットを演じてるのは、俺の彼女の沖田葵。
サエと葵が並ぶとベストカップルに見えるけど、葵は俺の彼女なんだと思うと凄ぇ嬉しかった。
いよいよクライマックス。
そういや、葵がサエとキスするフリをするって言ってたよな…
いくらフリとは言っても見たくねぇ。
俺が舞台から視線を外すと会場が一気にざわめいた。
俺が舞台に視線を戻すと
自分の彼女と親友がマジでキスしてた…
それから終幕するまでの事を俺は覚えていない。
「おぃ、サエっ!」
我に戻って、体育館の外に、衣装を着たままのサエを連れ出した。
「おいおい、そんなに殺気立ってどうした?」
平然と言うサエに俺の怒りはピークに達した。
「どうしたもこうしたもねぇよっ、何んで葵とマジでキスしたんだよ!!」
怒りのせいで俺は何が何だか解らなくなって、気付いた時にはサエの胸倉を掴んでいた。
「そんなに怒るなよ。」
「誰だって怒るだろうよ…」
酷く裏切られた様に思えた。
いつも自分の事を好きだと言ってくれる親友に、とても酷い仕打ちを受けた様に思えた。
「いくらなんでも、酷過ぎだぜ…」
「酷いのは…本当に酷いのはバネだろっ!」
「はぁっ!?」
サエが何を言っているのか解らない。
自分はサエを裏切るようなマネは今まで一度たりともした事は無いつもりだ。それは、子供の頃を思っても同じだった。
なのに、サエの瞳は酷く傷付いた色をしている。
「サエ…?」
「沖田のキス、返すよ…」
逆に胸倉を掴まれて唇を押し付けられた。
一体、サエは何をしてるんだ…?
突き放そうと頭の中では思っていても、体に力が入らない。
深く濃厚で、俺なんかよりも断然上手いキス…
「…ッン、」
「ハァ…」
やっと唇を開放された時には二人共、息が上がってた。
なんでサエはこんな事をするんだ…本当に俺の事、嫌いになっちまったのか?
「サエ、何で…?」
「沖田より、ずっと前から俺はバネが好きだって言って来たじゃないか…!」
……はい?
「あれは、ダチとして好きって事じゃ…」
「こんなに愛してるじゃないか!」
えーーっ!!
「ちょ、俺達男だぞ!!?」
「関係ないよ。俺はバネが好きなんだ。」
つっこめねぇーーっ!!
「って、事は…」
「本当、悔しいよ…沖田に大好きなバネを取られたんだからね…」
今度は唇に優しく、掠めるだけの様なキスをされた。
「このくらいの仕返しはさせてくれよ。俺をフリーにさせたバネが悪い。」
「…ッ」
意地悪く微笑むサエに俺は何も言えなかった。
ただ解っている事は
俺はサエも葵も大好きだと言う事。
「なぁ、バネは俺の心をずっと束縛してるんだから、そろそろ体も束縛してくれないか?」
「黙れ、この腹黒王子がっ!」
「クッ…!?」
ダビデ以外に久しぶりに飛び蹴りをした。
その後、俺達は笑いあってお互いの顔を一発ずつ殴り合った。
そんな俺等の、二年の頃の学園祭。
だけど、これは去年の話しって言ったろ?
今年どうなったかは、秘密な。
Fin.
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