捧げ小説
5555Hit*蜜芙姫リク(柳生×海堂 同棲中の日常の一場面)
「薫、申し訳ないのですが今夜も遅くなりそうです。」

「そうっスか…」


この人、柳生比呂士と俺、海堂薫が同棲を始めて早一ヶ月が過ぎようとしている。
比呂士さんが社会人になった事をきっかけに俺達の同棲が始まった。
つっても、比呂士さんはインターンだから本人いわく毎日が勉強らしい。

最初は嫌な奴だったのが今はこんなに好きで…愛の力はすげぇと思うし、あの奇妙な出会い方にも今は感謝してる。


「夕飯は作っておくっスよ。何がいいっスか?」


俺は午後から講義だから、掃除や洗濯をして部屋を綺麗にしとこう。
大学から帰って来たら、美味い夕飯を作って「お帰りなさい」ってちゃんと言おう。


「薫…君が作ってくれる食事なら。」


この人が、微笑みながら俺の名前を呼ぶのが好き。


「今日も遅くなってしまいそうですから、君は先に寝ていて下さいね。」


この人が俺の事を何かと心配してくれんのが、すげぇ幸せ。


「ちゃんと、夕飯作って待ってるっスから。」


アンタが居ないと寂しくて不安で寝れないんだ。なんて言ったら、愛想尽かされちまうか…


「薫…君って人は。」


この人の微笑みが好き。
優しく俺の髪を撫でてくれんのが好き。

けど、無情にも朝食後のゆったりとした時間は流れ、比呂士さんが出掛ける時間になった。俺は、この時間が一番嫌いだ。
「いってらっしゃい」って素直に言えねぇ。
一緒に暮らしてみるとお互いの生活の違いを痛感する。

比呂士さんと同じ年に生まれてれば
一緒に学生生活が送れたんだろうなとか、
一緒に社会人になって、生活費とかも親や比呂士さんだけに負担掛けなくて済むんだろうなとか…

毎日、玄関まで比呂士さんの背中を見ながら考えちまう。


「薫、そんな顔をしないで下さい。出掛けたくなくなってしまいますよ…」


靴を履いた比呂士さんが困った顔で俺を見ているんだけど、その顔が歪んで見える。
比呂士さんに言われて初めて気付いた。俺、今にも泣きそうだ…


「今日は、なるべく早く帰って来ますよ。君も気をつけて、いってらっしゃい。」

「っス…」


比呂士さんの言葉に頷いたら強く引かれた気がして、俺が状況を理解した時には、俺は比呂士さんの腕の中にしっかり抱き締められていた。


「比呂士さ、ンっ…」


触れるだけの、優しくて甘くて
体が溶けちまうようなキス…


「いってきますよ、薫。」


パタン―――
ドアの閉まる音。
あの人の居ない空間。

そんな事すら俺は寂しくて
熱の残る自分の唇に、そっと手をやった。


「フシュー…」


比呂士さんとのキスは
心臓が止まっちまうんじゃねぇかってくらい恥ずかしくって
体が溶けちまうんじゃねぇかってくらい心地よくって…

きっと比呂士さんは、キスの後に俺が茹でタコみてぇになってんのは知らねぇんだろうなとか
比呂士さんは毎日、玄関を出たら、どんな顔をしてんのか考えて…

でも結局は、比呂士さんのキスで今日も頑張ろうって思えちまうのが不思議だ。


こんなに好きなのに
一緒に暮らし始めて俺の知らねぇ比呂士さんが居る事に気付いたら、日を追う毎に好きになってる事も気付いた。


今夜は夕飯、何作るかな…
美味い夕飯作ったら、また俺の知らない比呂士さんの表情で「美味しいですよ。」って
喜んでくれっかな?




毎日毎日、俺は新しい比呂士さんに出会って恋してる。










END...






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