柳生海小説
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ちょっとの事で機嫌をそこねたり
ちょっとの事で泣いてしまったり
ちょっとの事で泣き止んだり
ちょっとの事で微笑んだり
ちょっとの事で笑顔を見せてくれる彼が、堪らなく愛しい。
―――777
7月7日。
年に一度、織り姫と彦星が出会える日。
今年も生憎の曇り空で天の川はおろか、一つの星すら見えない。
それでも町では七夕祭が開催されていて、こうして私はそれを口実に海堂くんとデートしている。
父親のを借りて来たと言う少し渋い浴衣姿の海堂くんはその辺の女性より美しく思えた。
「そうだ…はい、海堂くん。短冊を書いて下さい。」
「…。柳生さん、俺に短冊を書けと?」
「えぇ、せっかく七夕祭に来たのですから。ね?」
海堂くんと合流する前に婦人会の方々が配っていた真っ白い短冊を半ば強引に手渡した。
俯き加減に嫌そうな顔をする海堂くんだが、その顔を覗き込みお願いをすれば、たちまち彼の顔は赤みを帯びる。
「…っス。」
「では、これで書いて下さいね。因みに《全国優勝》…だなんて書くのは無しですよ。」
海堂くんにペンを渡しながら言えば一瞬驚いた顔を見せるも不機嫌そうな顔になる。
「なんでっスか…」
「あまりにも海堂くんらし過ぎるお願いだから…とでも言っておきましょうか?」
「ケチ…」
「フフ、何とでも。」
境内の人込みから離れた小川の辺(ほとり)に腰を下ろせば、海堂くんも隣にしゃがんでくれる。
それだけで幸せな自分。
余程、彼に惚れているのだと実感してしまう。
一生懸命考える彼の横顔が堪らなく愛しい。
さらさらと揺れる前髪、長い睫毛、通った鼻筋、ふくよかな唇、…全てが美しい。
何より、彼自身の中身が1番美しいのだけれど。
「よし、出来た。」
「見せて頂けますか?」
片手を差し出せば海堂くんは眉間にシワを軽く寄せながらも頬を染める。
「…どうせ見るんだろ。」
「勿論、天の川でなくても私に叶えられる願いなら叶えて差し上げたいですから。」
「っ、恥ずかしい奴…」
膝を抱き、ぷいっとそっぽを向いてしまう海堂くんを微笑ましく思いながら彼の短冊を持っている手を握りこちらに引き寄せる。
覗き込んだ短冊に書かれていた文字は―――
「海堂くん、これなら叶えて差し上げられそうです。」
「、本当っスか?」
「ええ、本当です…」
海堂くんを引き寄せ、そっと彼の髪にキスを落とす。
ちらりと視界に入った小川には晴れた空が…天の川が綺麗に映されていた。
「ほら…私達の間に天の川は流れていないでしょう?」
小川を指先で示せばフッと緩む海堂くんの口元。
珍しく、彼から私に寄り添い肩に頭を預けてくれた。
「アンタを好きになって、よかった…」
海堂くんの告白は、とても小さい声で、とてもクリアに私の胸に響いた。
「海堂くん、ありがとう…」
彼の短冊に書かれた願いは、私にとっても大切な願い。
引 大 彦
き 好 星
離 き と
さ な 織
な 人 り
い と 姫
で の
下 様
さ に
K い
・ ゜
K
Fin
*****
2007*07*07
777の日に全ての人に幸せを
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