柳生海小説
紳士だって本当は。sideY
触れ合うような口付けをしただけなのに海堂から肌で感じ取れる位の鼓動が伝わってくる。
こういう行為に慣れてないのかと思うと同時に柳生は嬉しくて仕方がなかった。
「こんな短期間で、まさか君を手に入れる事が出来るだなんて思わなかった…これから先、色々な君を知って行きたいです。」
「俺も…」
俺もと短い言葉ながら一番欲しい言葉を返してくれるのが愛おしい。
柳生は、まだ抱き締めたままの海堂の頬にチュッとキスを落とす。
途端に紅に染まる海堂の頬。強く抱き締めずにはいられない。
「なんか…」
「なんでしょう?」
「アンタ、エロい。」
海堂の言葉に柳生の脳内の中では色々な思考が飛び交う。
そして答えが出た時、思わず吹き出してしまった。
「ムッツリよりは良いと思うのですが?」
「紳士のくせに…」
自然と海堂を抱きしめる力が強くなる。
海堂も多少慣れてきたのか肩の力が抜けて来た様だ。
「私は君になら変態と言われようがエロいと言われようが擽ったいだけですよ。」
「アンタ、やっぱり変だ…」
「何と言われても君に想いを伝えられる手段になっていれば良いのです。」
海堂の頬が赤みを帯びる。
海堂の頬にキスを落とし、ギュッと抱きしめ直した。
「あの…」
自分の腕の中で海堂がこちらを見上げている。
そんな海堂の様子が可愛くて海堂の髪に指を絡ませながら視線を絡ませる。
「はい?」
「…なんでもねぇ。」
照れ隠しなのか口を噤んでしまう海堂に自然と頬が緩んでしまう。
「あぁ゙!?俺には言えねぇってんスか?」
「ま、真似するんじゃねぇ!」
海堂の声色と口調を真似れば、それだけで近付けた気がした。
頬を紅潮させ腹を小突く海堂にククッと笑い肩を揺らす。
「アンタ、何気に口癖悪ぃ…」
「今更ですよ。」
幼少から父や母に連れられ、病院に行く事が多々あり、仕事で忙しい父や母に代わり躾の厳しい祖父母に育てられた。
寂しい思いはしなかったのだが、世間を渡る為の自分と本当の自分がいつの頃からか居るように感じ始めていた。
そんな中で海堂と出会い、いつでも自分に正直な海堂に惹かれたのかも知れない。
そういう点では仁王も…
「フフ、君に嫌われない様に気をつけなければいけませんね。」
「今の所、アンタを嫌いになる予定は無い。」
海堂からの言葉と口付けが嬉しくて、嬉しすぎて…
涙が零れそうになった。
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