柳生海小説
1/365*5/11
母さん、今日と言う日をありがとう―――
5月11日。
俺、海堂薫の誕生日。
中学3年生になった俺は、少し背も伸びて、筋肉もついて…なんだかんだ仲の悪かった桃城とも少しずつ解りあえる様になり部長と副部長として部も協力して纏められる様になった。
「兄さんっ、お誕生日おめでとうございます!」
リビングに下りると葉末が抱き着いて来て祝ってくれた。
「ありがと…」
照れ臭く簡単に返事をすると自分の性格を解っていてか微笑む弟が可愛らしい。
「おはよう、薫。」
「おはよう。薫、今日は自主練も早目に切り上げて帰ってくるのよ?」
父さんも母さんも毎年、俺達兄弟の誕生日を盛大に祝ってくれる。
思わず笑みが零れた。
もし本当に居るのなら…
神様、俺を幸せな家庭に巡り会わせてくれて本当にありがとうございます。
家族で朝食を済ませ、葉末と一緒に家を出た。
青学に入学した葉末は、本人の意志でテニス部に入った。友達も出来、順風満帆な学園生活を送っているようで、兄として俺も安心している。
二人で電車に揺られながら、夕べのメールを思い出していた。
0時ちょうどに届いたの愛しいあの人からのメール…
それだけで、今日の俺は幸せだった。
***
学校に着くと、いきなり後ろから肩に衝撃を喰らった。
何かと驚いて振り向くと、去年卒業したテニス部の先輩達。
「せっ、先輩達、何してんスか!?」
「やぁ、海堂おはよう。今朝も早いな!」
「今日、海堂の誕生日の確率100%…」
「と言う事でOBが祝いに来た。」
「海堂、部長として頑張ってるみたいだな。」
「頑張るのもイーけど、こういう日くらい気を抜いてもいーんじゃにゃい?」
「フフッ…そういう訳で、これはみんなから。」
不二先輩に手渡されたのは綺麗にラッピングされた包み。
嬉しくて、擽ったくて、先輩達に感謝の気持ちでいっぱいだった。
「凄く嬉しいっス…本当に、ありがとうございます!」
―――
――
―
先輩達も朝練の為に高等部に行き、今日も俺の日常が始まる。
同じく3年生に上がったテニス部員の奴等に祝いの言葉を貰えたのが、意外で何だか照れ臭かった。
桃城はMから始まるファーストフード店のクーポン券をくれたが、俺は使い方が解らない…
荒井に使い方を聞いたら、今度一緒に行こうと言ってくれた。
***
朝練がいつもより清々しく感じる。
ボールのインパクト音、光る汗も、照り輝く太陽も…もうじき夏が来る。
誕生日で浮かれてばかり居られない。
今は都大会を勝ち抜かないと…去年のように頼れる先輩達は居ない。
今は自分がその立場だ。
手塚部長じゃねぇけど…
油断せずに行こう。
***
今日は一日、学校の中で俺の誕生日を知ってる奴に祝って貰えたり、茶化されたり…
『マムシが誕生日で脱皮した』って言った野郎は半殺し程度にノシといた。
今日の放課後は部活には参加しないで図書室で桃城と次回の大会メンバーのオーダーを決める事になっていた。
レギュラーは、俺・桃城・越前・荒井・池田・吉村(駿)・吉村(優)・伏見・林の八人…
3年生は去年、先輩達が引退してから自覚が出たらしく、メキメキと実力を延ばしている。
俺と桃城は、2年生の堀尾・加藤・水野辺りが次回のランキング戦で台風の目になって欲しいと顔を見合わせ言った。
去年からの課題のダブルスは、吉村兄弟ペアが先ず一組、もう一組は荒井・池田・林の中で組めばいい線だ。
去年のような化け物並の先輩達が卒業しても、今年は今年でいいチームになっていた。
なんだかんだと、相手チームのオーダーを予測したり、今月行われた身体測定の結果を参照にオーダーを組んだり、時々、桃城と口喧嘩していたりしていたら随分と遅い時間になってしまっていた。
「マムシ、今日はこの辺りにして上がろうぜ。」
「だな…お疲れ。」
「おぅ。」
散らかしたモノを片付け、図書室を後にした。
今日は体を動かし足りない…帰っていつもより多めに自主練をしよう…
外に出れば、広がるのは真っ赤に染まった空。
日が落ちる逆の空からは紫色の空が伸びて来ている。
足速に校門へ向かえば、校門からコチラに伸びる影と、見覚えのあるシルエット。
キラリと逆光で光る眼鏡に胸が高鳴る…
「薫、お疲れ様です。」
「なん、で…?」
普段の日常には居ないはずの恋人。
夕べもメールで祝ってくれたのに…
「愛しい君の誕生日ですから。」
歩み寄る愛しい恋人に俺は走って近付き、抱き着いた。
「来るなら言ってくれよ!」
「ごめんなさい。どうしても君に会いたくて…If I had never met you,your birthday would be just another day of the year.Now there's one more horiday on my calendar!薫…誕生日、おめでとうございます。」
「ありがとうございます…」
長い抱擁の後に貰ったのは、小さな小包と
大好きな恋人からの口付け。
嬉しすぎて涙が溢れそうになった。
母さん、今日と言う日を本当にありがとう――
End.
If I had never met you,your birthday would be just another day of the year.
訳:あなたに出会わなければ今日は単なる1/365日でしかなかったんだけど。
Now there's one more horiday on my calendar!
訳:私のカレンダーには一日だけ祝日が増えました。
***
HAPPY BIRTHDAY to KAORU!!
2007*05*11
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