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ゲームオーバー
8

「時任さんが正しいのかな?」

僕たちは高台の上に座り込んでいた。夕芽の一言が重苦しい沈黙に終止符を打つ。夕芽は小さな手を握り締めた。巻き込まれたスカートが大きな皺になっている。
時任さんはもう灰色の住人に紛れて分からなくなってしまった。足元に広がる幾千もの灰色の中に時任さんはいるはずであった。

「やっぱり私たちにはでき……
「夕芽」
ごめっ、大変なことを口にしちゃうところだったね」

夕芽の発言を静止して頭を撫でる。絶望を口にしてはいけないと分かってしまうと、自分の頭にいくつもの言葉が渦巻いた。無理だ。出来ない。不可能だ。諦めろ。無駄だ。灰色の住人になったほうがいいんじゃないか。苦しまなくていい。発言するだけでいい。そうすれば楽に……
 言葉はどれも突き刺さるような鋭さをもって僕の希望を苛めた。泣き出しそうなくらい張り詰めた心に言葉は痛いほどであった。

「できるよ!」

僕は叫んだ。拳を握り締める。指の先が白くなるまで力をこめると全身が震えるようだった。

「時任さんの理論は完璧だった。うまくいかなかったのは方法がまずかったんじゃない。足りなかったのは、勇気だ」

言葉にすると、僕の体は軽くなった。
勇気が全身に満ちていくようだった。
 
「じゃあ落とすよ」

下で身構える夕芽と加野さんが首を縦に振る。石の彫刻を抱えると、手の平にじわりと汗が滲んだ。深く息を吸って、心を落ち着かせる。「できる」「できる」何度も頭の中で繰り返した。

彫刻が垂直に落ちていく。
僕たちは試練に合格した。


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あきゅろす。
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