NOVEL 天使の顎 season2’ OVERDOSEEXOCIA Special session *Legacy Of Vicious and Evil* 宝石箱をひっくり返したような猥雑な煌めきを見下ろしていた。 今となっては古めかしい針が時間を示す時計の塔の上、逆巻く突風に髪とマフラーを躍らせる。 瞳は黄緑、肌は浅黒。 少女にしては鋭すぎ、女というには垢ぬけた美貌。 地上1000メートルはある塔からは、1000年隔てた東京の街が見えた。 メガロポリスと揶揄されていたか、彼女は邪悪に嘲笑した。 マフラーの中に蠢く小さな獣は彼女の頬にすりよると、悪魔のように長い爪に宝石をちりばめた指がそのコウモリを撫でた。 そしてもう一つ、都市の光が作る彼女の影の中、気だるそうにまだメガロポリスを見下ろす青い目をした青年の”影”。 「そんでもって、レガシィはどうしたって?」 くるりと踵を返して彼女は振り返った。 逆光の中で黄緑色の双眼がぎらつく。 大げさな動作で彼女は肩をすくめた。 「アンタの中の”レガシィ”に聞いてみたら」 意地悪く言って彼女はまた煌びやかな絢爛都市に目を向けた。 レガシィの目は爛々と輝き、神経が研ぎ澄まされた耳には影が響く音すら聞こえる。 「ふふ、今日も綺麗な”邪悪”の音色……」 そして、三つの影は突風に飲まれるように闇の中に消えていった。 残念ながら、この邪悪で一途な物語には明確な終わりが無い。 彼女が彼女の”影響”を、未だ以て、集める事が出来ていないが故に。 という事で結末はとっておきましょう。 あなたの”レガシィ”を、彼女が迎えにくる日まで。 <Arrivederci> [*前へ] [戻る] |