NOVEL 天使の顎 season2’ OVERDOSEEXOCIA
14 *再再再来/Undead4
話は再び、レガシィが日本に戻ってきた夜に戻る。
「死んだ。あっけなくおっちんだ。それも何度も何度も」
そう言って彼女はざらついた質の悪いコンクリートの上にしゃがみこんだ。
何の隠喩ともわからずジョーは振り返り、彼女のオーバーダズに目を凝らす。
あれやこれやが蠢く中に、ニャルラトホテプやらアポフィスの影を見た。
「お前……」
「今の私の力はアサドアスルに並んでいる。封印し損なわれた巫女に負ける気もしない。
ただ……」
アサドアスルを倒しても、力の源である邪神という存在がいる限り、レガシィはその器であり続ける。
レガシィさえ倒してしまえば邪神が降りてくる器は消え、事は終息するだろう。
だからこそ法王庁は彼女を執拗に狙っていた。
彼女がアサドアスルを喰った時点で邪神は喜々として降りてくるだろうし、もしかしたらその意志が加わってこそここまでの展開だったのかもしれない。
だが、アサドアスルを倒さなければ黒金絹夜を取り戻せないし、彼女が吸収する以外に方法はない。
しかし、それでは。
沈黙がジョーの心情を物語った。
どんなに最善を尽くしても、それでは結局彼女は――。
ようやくジョーの口から重く知った嫌味が出た。
「一年前と、何も変わらないな……。誰が犠牲になるかなんて話じゃないか……。
きぬやんはお前に生きていてほしいから……あんなことしたんだろ。
それをお前がひっくり返す事も無いだろ。俺はそれを耐えるのも戦いだと思うよ」
「…………」
立ちあがったレガシィはたたっと小走りになって軽くジャンプした。
ふわ、と彼女の身体が浮いて細いフェンスの上に着地する。
最早人間技ではない。
彼女は思いふけるように月を見上げていた。
風が通り、音が通り、時が通りすぎる。
そうして振り返った彼女の目は逆光にも拘わらず月より眩しく輝いていた。
「彼のいない世界なんて、滅びてしまえばいい」
だったらどうして今すぐその鉄槌を下さないんだ。
どうして諦めて楽にならないんだ。
泣いて嘆かないんだ。
死して尚、彼と共にこの世界を歩むことを望んでいるからではないのか。
希望を捨てていないからではないのか。
誰かを許す為にどうしてお前が背負い苦しむのか。
* * *
話は戻る。
翌日、レガシィは再び九門高校の屋上に戻り、そして右手を突き出した。
待ち構えていたかのようにそれは高らかな、赤い光を巻き上げて紋様を描く。
途端に空も地もやかましくなった。
黒いタンデムローターが見張っている。
地上にはジョーを先頭としたかつての仲間たちが突風の中、見上げている。
どいつもこいつも敵だ。
「かかってこい……!」
低く唸り笑ってレガシィは魔法陣の上に立つ。
こうして、長きにわたり続き、長きにわたり封じられていたあの男の物語が再び動き出した。
法王庁。
脈守。
アサドアスル。
ハイパーレガシィ。
そして、邪神。
それぞれの思惑の中、暗黒の楽園ヘラクレイオンが再び開かれる。
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