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NOVEL 天使の顎 season2’ OVERDOSEEXOCIA
11 *陰謀/Conspiracy*4
 開けた草原の中、銃器を構えた凶暴な聖者達が列を成していた。
 空には戦闘機、陸には歩兵と戦車、海には艦隊。
 それでもレガシィは目の前の敵という敵全てが哀れな羊の群れに見えた。

「生きて返れないわよ」

 レガシィの鋼のような言葉の返事は銃声のコーラスだった。
 しかし銃弾が放たれる時すでにレガシィは上空を舞い、歩兵には目もくれずに数百メートル先でおもちゃのように陳列している戦車に目をつけた。
 あれがやばい。
 聖法力を吐き出す聖女のパンツァーはデカブツのくせに弾が特殊なだけあって連射が可能だ。
 早速費消したレガシィに装弾筒が向けられた。

「ブサ、あんたも食っちまわれたくなかったらうまくやんのよ」

 ピギーッ!
 ブサが今まで聞いたことも無い絶叫を上げる。
 四方から飛んでくる光の砲弾を抜け、アンバランスになりながらようやく着地する。
 跨がれた歩兵は一気にレガシィに銃弾を浴びせかけ、正面からはパンツァーがゆっくりと装弾筒を傾け直す。
 どこに逃げても蜂の巣は間違いない。
 誰もがそう思っているのに、レガシィの足は止まらず戦車の砲撃をかいくぐってとうとうその上に躍りあがった。
 トン、と戦車に彼女のつま先が降りたその時だった。

「ッ!」

 海側から不自然なきらめきが走ってレガシィは反射的に身を捻ってその場からまた高く飛び上がる。
 同時に痺れるような気配を放つ白い光が戦車を貫き、爆ぜさせていた。
 爆風に煽られながらレガシィは別の戦車の上に着地し、海側に顔を向ける。
 戦く聖者達も彼女と同じものを目にしていた。
 巨大な蛇が口から光を吐き出していた。
 目の無い巨大な悪神を、レガシィはよく覚えていた。

「アポフィス――カイ!!」

 目の無い蛇の下、灰色の囚人服に手錠をされた姿の青年が立っていた。
 少し浅黒い、体格のいい青年だが目の下には遠目から見ても分かるほどの隈が浮いておりレガシィが知っていた彼の姿よりもかなりやつれている。
 だというのにカイはレガシィと同じような邪悪な笑みを浮かべた。

「やあ、姉さん。久しぶりだね」

 口から光を滴らせた蛇はレガシィに向けて口を開いたままだった。
 仲間を巻き込む砲撃に聖者たちもわずかながら動揺したのかレガシィから距離をとる。

「カイ……あんた、何を……」

「そうだねえ。法王庁浄化班のいいオモチャになったってところかな。
 どうやらアテムの家系には”聖魔”のいずれにもなりにくい――境界線を持ちにくい特性があるらしくてね。
 僕は聖法力漬けにされて、オーバーダズもこのとおり、聖法力を放つ不細工なバズーカにされちゃったってわけ。
 秘密結社ギーメルギメル最後の総帥に相応しい滑稽な末路でしょ」

 しかしカイの表情にはやはり愉悦と破壊衝動が満ち満ちている。
 全くもって、進歩も変化もない、あの時のままだった。

「ま、理由なんてどうだっていいじゃない。僕と姉さんは今こうしてまた向かい合っている。
 ……僕ね、半年間ずっと考えていたんだ。やっぱり姉さんを殺すのは、僕なんだって」

「……クソガキ!」

 ぐっと歯を食いしばるレガシィ。
 幼さの残る表情でカイは反り返って笑う。

「怒って! 僕を否定して! それでも飲み込んであげるから!!」












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あきゅろす。
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