・雑記
無題
「好きなんだ」
無理矢理の行為が終わったあと、その男は私を抱き寄せ耳元で甘ったるく囁いた。
「……」
自分の中に吐き出されたままの彼の本能のが気がかりだった。
どういうつもりなのだろう。
「俺、本気だよ」
抵抗しないことを良いことに男は細い首筋に舌を這わせる。
「…嘘ばっかり」
気持ちがなくても快感はある程度感じるものだ。
ゾクゾクと押し寄せる。
「嘘じゃないよ」
「沢山彼女いるくせに」
「嫌なら全部別れるよ」
「……」
私は静かに微笑む。
心の中で男を哀れみながら。
この人の中で 女 とはその程度の生物なのだ。
見え透いた嘘をいくら口にしても、米粒程の違和感すら湧かないのだろう。
「俺のものになってよ」
体を奪ってなお自身になびかない獲物を捕らえようと、男は目を光らせた。
焦りを含んだその指先は、私を快楽へ落とそうと体をまさぐり始める。
二度目の行為が始まる。
抵抗しても無駄だろう。
疲れるだけだ。
もうどうでもいい。諦めよう。
「俺は本気でお前が欲しいんだよ。」
どうでもいいくせに。
私はこの男が嫌いだ。
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