・雑記
はにかみ君
「僕の夢を叶えてください。」
五月のぽかぽかとしたお昼時の事。
昼食の準備をしていた岡寺くんは、とても真面目な顔をしてフライ返しを私に向けた。
「なぁに?」
「エプロン付けてこれ持ってください。」
そう言って私に、自分が持っていたフライ返しとスペアのフライパンを差し出す。
「いいよぉ。これでいい?」
「か、可愛い…。」
口と鼻を押さえて悶えている岡寺にちょっとひいた。エプロンフリフリだし。
「あの、もう一つ…叶えてくれませんか…?」
「なぁに?」
もじもじする岡寺くん。
「僕と、結婚してください。」
「いいよぉ。」
ちなみにここはたった二畳しかない狭い台所で、ついでに言うとさっきから岡寺くんの作りかけの炒め物がフライパンの上でどんどん黒焦げになってゆく。
「え、…いいよって…ええ!?軽っ!!香苗さん軽っ!僕の一世一代の告白が「いいよぉ。」で流された!?」
「岡寺くん。野菜炒めが炭だよぉ。」
「ああっ!お昼ご飯が!もう僕泣いちゃいそうです。」
なんだか岡寺くんが可哀想になってきたので、私は彼をこれから沢山幸せにしてあげようと思った。
「岡寺くん、岡寺くん。」
「はい?」
「老後も一緒にいようね。」
「うぇっ?!」
耳まで真っ赤な岡寺くんは一段と可愛いです。
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