逃げる。
ー鍛錬場にてー
急な集合に1年は戸惑い事情を知っている2年は沈黙を保ち、3年は静まっていた。
一番前に弥彦と藍が並べば静まり返った。
弥彦の顔は魔王の如く恐ろしい顔だった。
「てめぇらも知っている様だが、生徒会長の安藤葵がZクラスに今日から来たようだ。」
弥彦の言葉を肯定するように見渡せば知っているという顔だった。
そして、弥彦の言葉と魔王の顔をさせているのが葵のせいだと勘違いした1年の一部が調子に乗って声をあげた。
「セフレと遊んでリコールされる様な生徒会長がZクラス入りなんて舐められたもんすね。」
「俺達が花房さんを煩わせる元会長さんを、Zクラスから追い出してやろぉぜ!」
「だな。わざわざ花房さんの手を煩わせる必要なんてねぇ。」
「Zクラスから追い出されたら、一般家庭の元会長さんはこの学園で居場所なんて無くなんだろ。」
ギャハハと汚い笑いをする輩に藍は無言で近付いた。
状況を理解した3年は溜息をつき、2年は怯えた。
「花木さん。俺らにっグワッ!」
一瞬で顔面を地べたに押し付けられた不良は潰れた様な声をあげた。
藍の行動でまたも静まり返った。
弥彦も汚い笑いをあげた輩の元に行き無言で全員を叩きのめした。
そして、潰した輩の上に座り地を這う様な低い声を出した。
「お前等。俺達は、ずっと言ってきたはずだ。噂や周りに流されて本人を見ないで判断を下すなと…。
どうやら坊ちゃん共と同じ頭しか無い奴らばかりのようだな。
その薄っぺらい脳みそに叩き込め。
この腐った学園を変えていたのは安藤葵という人間だと言う事。
あいつは無理矢理生徒会長にされながらも面倒くさがりな癖に、一番学園の為に働いていた事。
この三ヶ月、たった一人で寝る間も惜しんで仕事をしていた事。
今度くだらねぇ事で彼奴を侮辱するなら俺が直々に制裁をしてやる。」
弥彦の言葉に息を呑む音がした。
静かに聞いていた春馬は、真相を聞かされて眉間にグッと皺を寄せて俯いた。
それを見た藍は弥彦を立たせた。
「仮にも俺達は、弥彦が風紀だった時に全員が風紀として学園の為に働いたんだ。
その誇りを穢すな。
俺達は、前生徒会長と葵に風紀を任されたんだ。
他の生徒が何と言っても、前生徒会長と葵に守られていたのを忘れんな。
葵は贔屓なんてしない。
俺と弥彦さえも一生徒として付き合う。良く見て判断をしろ。」
藍はそう言って解散させた。
残ったのは3年と藍と弥彦だ。
3年は葵が本当にZに来た事を純粋に喜んでいて、毒気を抜かれた藍は苦笑して弥彦は怒りを消して一人天井を見つめていた。
[*退避しろ][ちょっくら散歩#]
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