逃げる。
ー葵が去った後の教室ー
葵は何も言わないでクラスから出ていった。
春馬は声を荒げた生徒を睨み舌打ちして荒々しく椅子に座った。
春馬は苛ついていて、周りは怖がっていたがそんな春馬に近づく一人の男は楽しそうに笑っていた。
男は神谷南。春馬の右腕のような存在だ。
「…噂とは当てにならないもんや。
お前もわかっとるんやろ?」
南の言葉にも春馬は舌打ちした。
春馬の舌打ちと同時に荒々しく教室の扉が開いた。
そこに居たのはZクラス担任兼生徒会顧問の玉木鳴海と3-Zの頭でありZクラスを纏める、前風紀委員長の花房弥彦が立って居た。
見た目だけならホストのようだが、中身面倒くさがりな鳴海が教室を見渡して珍しく焦った様な声で、同じく焦り苛立ち舌打ちしている弥彦に声をかけた。
「遅かったか。
おい。花房、俺は葵を探す。
Zクラス全員に話し通しとけ。」
「チッ。うぜぇ。
あんだけ教育してやったのに噂に流されやがって。」
「お前の愚痴を聞いてる暇は無いからな、纏めとけよ。」
鳴海は弥彦の返事を聞く事無く、教室から走って出ていった。
2-Zは弥彦の苛立ちに春馬や南さえもが冷や汗をかいていた。
弥彦の深い闇の様な黒い瞳が苛立ちを見せている。
「ありゃ。やっぱり間に合わなかったか。」
弥彦の横から顔を出したのは、前風紀委員副委員長の花木藍だった。
チャラ男のような見た目だが、常識人で弥彦の右腕でストッパーだ。
藍は瞬時に状況を理解して溜息を漏らして弥彦の後頭部を叩いた。
「苛立ってるだけじゃ、意味無いでしょー。
俺達の教育不足で葵ちゃんが巻き込まれたんだから。」
藍の葵ちゃんと呼んだ事に周囲がざわつくが、藍が春馬と南に視線を向ければ静かになった。
「お前等も坊ちゃん共と同じ頭しか無いの?
さっきの玉ちゃんと弥彦の会話で察してよねぇ。
…今すぐに鍛錬場にZクラス全員集めろよ。
今すぐにだ。」
弥彦を宥めていた藍も口調が変わった事でかなり怒っている事がわかった2-Zは急いで1年と3年を集めに向かった。
弥彦は何も言わず、鍛錬場にむかった。藍も黙って弥彦を追った。
[*退避しろ][ちょっくら散歩#]
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