逃げる。
清々した
俗に言われる王道学園で仕事をしている生徒会長の安藤葵(あんどうあおい)は、風紀委員長の漣壱成(さざなみいっせい)に一枚の紙を突き付けられていた。
その後ろには見知った顔。
副会長の霧峰薫。会計の蘭童彼方。
書記の神木修哉。
そして一番後ろで守られる様に立ってニヤニヤ笑う三ヶ月前にこの学園に来た転入生の、天音嵐がいた。
「なんの用だ?」
自分の仕事の書類から目を逸らさずに聞く葵。
それが、自分の立場がわかっていない様で壱成は苛立った声を出した。
「…だから、お前はリコールされた。
生徒の七割の賛同と理事長からもサインを貰ったって言ってんだろぉが。」
そこで書類を終わらせた葵が顔を上げた。
何時もと変わらず無表情で、透き通る藍色の瞳で壱成を見た。
壱成は眉間の皺を深くして、見返した。
「わかった。」
誰もが葵の出方を息を呑んで見ていたが、葵から帰って来たのはそれだけだった。
葵は何事もなかった様に会長席の片付けを始めて、荷物を纏めれば生徒会のバッチを机に置いて歩き始めた。
葵の行動に、何時も俺様風を吹かせる壱成さえも動揺していて動けなかったが、やっとの思いで声を張り上げて葵に最後に伝えるべき事を伝えた。
「おいっ!てめぇは明日から、Zクラスだ。部屋は首席だから同じ階なのは変らねぇが部屋は変わるんだ。
今日中に纏めとけ。」
誰もが最高クラスのSクラスだったら、処刑通告のようなものだが、それに対しても葵はなんでもない事の様だった。
「わかった。」
それだけを返して生徒会室を後にしたのだった。
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