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ゆるゆる
5

そんな愛夢を憎らしい敵のような目で見ている妃がいた。

愛夢が控え室に向かったのを見て、スタッフに愛夢の様子を見るように頼まれたと伝えれば控え室に通された。

妃は扉をあける。

目の前にはドレッサーで化粧直しをしようとする愛夢がいた。愛夢の真後ろに立てば愛夢は驚いた顔をして何時もの笑顔を見せた。

「きさちゃん。どうしたのぉ?」

その言葉にイラつきを感じた妃は鏡ごしに愛想笑いを浮かべながら愛夢に話しかけた。

「愛夢先輩。俺に役を変わってくれませんか?」

その言葉に愛夢は申し訳なさそうな顔をして謝る。

「ごめんねぇ。これだけは変わってあげれないのぉ。」

その言葉を聞いた瞬間、愛夢の横っ腹を殴り睡眠薬を含んだハンカチを口元に当てた。そして腕を縛りドレスの裾をビリビリに切り裂いて放置した。

その時に愛夢を呼びに来たスタッフのノックの音で顔を出す。

スタッフに愛夢から変わりを頼まれたと伝えれば疑わしい顔を向けられたが、時間が無いのか舞台裏に案内された。

妃は自前の白のミニドレスをきていて、黒髪のロングの鬘を被っていた。

アップテンポの音楽が流れて妃は歩き出す。

ザワザワと会場がざわめく。
皆モデルの愛を見にきたのに違う人間で驚いていた。

そしてブーイングに変わる。

「なんで副委員長が立ってんだよ!」
「モデルの愛はどうしたぁ!!」
「ふざけんなよなぁ!!」

妃は戸惑う。

ターンして戻ろうとした瞬間。
デザイナーである八神愛華が走って来て妃に高いピンヒールで蹴り上げた。
綺麗な顔は怒りで歪んでいて、綺麗な足を晒しながら倒れた妃を踏みつけた。

会場はどよめいた。

愛華はマイクを持っていて、話し始める。

「てめぇら黙れ。
この学園の不細工に私の可愛い息子が襲われて、コッチはきれてんだよ。
学園ごと潰されたくなければ黙ってろ。この舞台は私の可愛い息子を披露してやる為に作ってやったのに、舐めてるよなぁ。」

「む、すこ?」

踏みつけられている妃が声を絞り出す。

「あぁ。この学園で鈴木愛夢と名乗る者は私の可愛い息子だ。本名は八神愛夢。なんせ、男のコモデルの愛でもあるから本名を隠してこの学園に入学させたんだが…。
優しい息子を踏みにじる奴がこの学園にはいる様だ。本当に舐めてるよなぁ。
愛夢は優しいから甘えてるんだろうが、生憎愛夢を守る者達は非情な奴が多いんだよ。
よって。
この餓鬼は今を持ってお終い。

おい。守れなかったんだ。
片付けぐらいやれよ。」

そう言って愛華が目線を向ける方には静かに怒りを露わにした弥彦がいた。

妃はすがる思いで弥彦を見上げる。

「やひ「黙れ。」ヒッ!!」

妃の髪を鷲掴みにして舞台から投げ捨てる。

そして一言。

「消せ。」

その言葉に待機していた黒服が妃を引き摺り去って行った。

弥彦と愛華の恐ろしさに舞台は静かになった。

「てめぇ。マジで役にたてねぇ。」

愛華の言葉に弥彦が眉間に皺を寄せる。その瞬間。

音楽が流れ出す。

愛華と弥彦に注目していた者は舞台に目が移った。



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