トラウマ
公開時間間近となったため、館内が暗くなった。
そして突然、右隣がビクンと跳ねた。
「…トイレ?」
「いえ…映画館の閉じ込められたような暗さが苦手で……」
声をひそめて美少年が怯えるように言った。
「実は、前に女の子に倉庫に閉じ込められたことがありまして…」
こ、怖!!
「それで、どうなったの?」
「運良く、先生が助けてくれました」
思い出すような安堵のため息が聞こえた。
「もしかしてさ、敬語口調なのって鬼(女)が怖くて自然と身に付いたとか?」
「…はい。癖になっちゃいました」
か、可哀想に。
「あ、もう始まるよ」
「…明里さん」
小さな声で私の耳元で囁いた。
い、息が耳にかかるんですけど!!
「……なに?」
「震えが止まりません」
その声までもが震えを帯びている。
「止めてください」
お願いです。
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