そして俺も変わっていく。
「なんだよーそうだったのかぁ!始めから言えよな〜」
そこまでバカだった。
「内密に、と言われてたから…」
「あーなるほど。どーりで似てる訳だよなー」
いや本人なんだけど。
え、ホントに信じてるのかこいつ。
どうしよう、ここまですんなりと通っちゃったらもう双子の兄を演じなきゃならねぇじゃねぇか。
面倒くせぇな。
つーかお前ホント馬鹿だろう。
仮にも族を率いる頭だろ?
あの人が泣くぞ!
「…そういえば、『氷の死神』を探しているとか言ってたけど見つけてどうするんだ?」
「あ〜…そこまで考えてなかったなー」
「……?連れ戻しに来たんじゃないのか?」
「あいつは誰にも告げずにチームから消えた。それはつまりもう戻らない、と言った様なもんだ。だから無理やり連れ戻すなんてことはしねーさ」
…そうなのか。
けど、確かに俺は誰にも告げずにこの学園に来た。
唯一の帰る場所だったあの家からも出て…唯一心が癒される場所だったあのチームも抜けた。
逃げて逃げて、ここに来た。
何も考えずに生きたい。
そう思った。
それなのに
「……何で探しに来た」
少し低めの声で問いかけると和緋は少しだけ目を見開き、ニッコリと笑い、
「俺が会いたいからだよ」
眩しいぐらいの笑顔でそう答えた。
俺はその表情に不覚にもドキリと…
「…するわけねぇだろ!お前が来たおかげで『金狼』達に感づかれたじゃねぇか!」
「あだっ!!いや、だって黙って行っちまう"光輝"もワリィじゃんかー!」
「黙れ!だったらせめて変装でもして来いよ!」
「あぁ!その手があったか!ってアレ?どこ行くんだー?」
「風呂だよ!」
阿呆はいつまで経っても阿呆だ。
俺はこれからどうなるんだ?
せっかく今まで目立たずにひっそりと過ごしてきたのに…
「じゃあ一緒に入ろーぜ〜」
「死ねボケ」
この転入生のせいで騒がしくて面倒な学園生活になりそうだ。
だけど…またこいつから離れる事に迷いがあるとか、さっき嘘をついた事を後悔しているとか、
そんな事をちょっとでも思った俺はどーにかしているのかもしれない。
ああ。
面倒な事は嫌いなのに、どうして俺の周りはその面倒事を運んで来る奴等ばかりなんだろうな。
おかげで面倒事には慣れてしまった自分がいる。
1st Stage:完
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