Side:棗
「顔が笑っていますよ。棗」
「ハッ…笑いたくもなるだろおよ」
あの楓とか言う奴…『氷の死神』と何かしら関係しているに間違いないな。
この俺と視線をかち合わせて最後まで逸らさなかった上に眼鏡でハッキリとは分からなかったがあの顔と目つき…
光輝に似ていた。
誰が流したかは知らねぇが、裏の世界である情報が流れた。
『氷の死神』が藤城学園にいる。
元々この学園に在籍していた俺たちにとっちゃデマかと思う情報だったが、無意識の内に探していた。
葉月もそうだ。
いや、俺達だけじゃない。
光輝に惹かれている奴なんざごまんといるだろう。
金色の髪に金色の瞳。
綺麗とも男前とも言える整った顔立ち。
人形のように表情を変えないが、その圧倒的な強さと威圧感には魅了されない奴の方が少ない。
俺と葉月は5年前に初めてそいつを見た。
まだ13歳だった俺等は"あの紛争"には参加せずにただ見ていたが…
その中に光輝がいた。
あまり歳が変わらない筈のそいつは表情を変えずに周りの奴等をたくさん倒してる。
躊躇いも何も無く、ただ倒す。
つい見惚れて気付いた時にはもうその姿は見えなくなっていたが、俺は心に決めた。
「…絶対に俺の物にしてやる」
それからは光輝を見かける度に勝負を挑む日々だ。
どこに消えても必ず見つけ出す。
絶対に逃がさない。
お前は俺だけの物だ。
他の奴になんか渡してやらねぇよ。
「棗?言っておきますけど、光輝に関する事は…私も譲りませんからね…」
「フン…俺が勝つに決まってんだろ」
「たいした自信ですね。まぁ…倒しがいがありますけど」
「互いにな」
これはゲーム。
どっちが…いや、誰があいつを手に入れるかのゲームなんだ。
負ける気がしねぇけどな。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!