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ハニー。




「ところでさ、何で皆ここが分かったの?」

「あ?何言ってんだ。おめぇ等が俺たちを呼んだんだろうが。閃光弾で」

「「閃光弾!?」」


ちょっと須藤さんに武くん、本気で驚かないでくれ。
そして俺を見るな。

確かに使ったのは俺だが黙っとけよ二人共。

そんな俺の願いが通じたのか、須藤さんが口裏を合わせてくれた。


「…あ〜アレね!うん!アレも武くんがやったんだよ!いや〜良かった良かった!」

「……っ」


睨まないでくれ武くん。


「ふん。まぁいい、お前らには詳しく話を聞くからここにいる全員、俺の部屋に来い」

「……あ?全員…?お、俺もなのか?」

「テメーもそんな格好してるって事は"そう"なんだろーが」


しまった…ここは着替えておくべきだったか。
今の俺はあの売買の連中にすり変わった時のままだ。
俺としたことが…

そんなもん武と須藤さんだけ連れて行けば良いじゃねぇかよ。
あ、ついでに成川くんもな。


「…俺は全然…何にもしてないんだが…」


ざまぁみろ、と言わんばかりに鼻で笑った武を一度睨みつけ、会長を見据える。


「この俺が来いっつってんだから来るんだよ」


珍しく思案していたように真面目でムカつくほど整った顔が一瞬にして嘲笑に変わり、その横に立っていた副会長が王子様フェイスを浮かべながら俺へ歩み寄ってきた。

くっそ!
こんな時に俺様スキル発動させんじゃねぇよ俺相手に!


「ねぇ…東雲くん…」

「な、何すか…つうか近い」


妖艶な笑みを貼り付け、副会長が俺の耳元で囁いた。
少し低く、甘い声が耳から直接脳に届いていく。

エロイぞ、この人…!
さすが歩く18禁。


「血の匂い…してるよ」

「!」

「……なんて、ね。」


咄嗟に距離をとった俺を見てクス、と笑い、可愛く首を傾げた副会長。

ハ、ハメやがったよこの性悪!
気付いてる…奴は絶対にコレは俺がやったと気付いてやがる…!

副会長…恐ろしい…!!


「椿の顔が怖い…」

「放っておけ成川。自業自得だから」

「?」




















「そういやぁ…こいつ誰だ?」


ホテルに戻ってすぐに会長が一言。
あまりに突然で今更な疑問だった為、ほんの少しの間をおいてから皆の視線が不良くんへ向けられた。


「……今更だな」


全くだ。
確かに疑問を抱くのが遅い。
遅いが…俺も不良くんの名前すら知らないことに今気付いた。


「晋哉…彼は僕と山田くんのチームメイトだよ。茅郁巳くん」

「ふーん」

「ちっ」


聞いておいて興味なさそうに不良くん…もとい、茅くんを上から下まで眺めた。

おお…なんか俺様攻めっポイぞ会長。
いつもそうなら良いのに。


「ま、フツーだな」

「ア?」

「俺の美形さには敵わねぇな」


ハイ!俺様ナルシストきたー!!
いやぁ茅くんもかなりの美形だと思うけどな…

ちらり、と茅くんを見ると、片眉をピクピクとさせながら額に青筋を立てている。

爆発寸前、という感じだな。


「……ハッ…まぁ良い…俺はてめぇみたいなザコチンに興味ねぇ…俺が興味あんのは…」




ぐいっ



「――へっ?」


何を思ったのか、茅くんはすっかり傍観側に回っていた俺の後頭部を引っ掴み、無遠慮に引き寄せた。


「……っ…」


突然の事すぎて何の反応もできず、目の前に広がる茅くんのドアップや、唇に押し付けられている柔らかいモノが何なのか理解するまで全く動けなかった。

うそ…だろ…


「こいつ、だ」

「な…にを…」


会長たちに向けてにやり、と口元を上げた茅くんの顔を半ば放心状態で見上げながら呟くと、再び顔を近付けてきた。


「そういう顔もそそられるな…」

「……って、てめぇ!!」

「おっと。何だよ、オマエ?邪魔すんな」


逃げたくても頭が働かず、現実逃避をしかけていた俺の目の前に、成川くんが飛び込んできた。
というより茅くんに殴りかかった、の方が正しいだろう。


「椿…」


何やら言い争う二人をぼんやりと眺めていると、後ろから武の声が聞こえる。

力無く武を見据えていると、徐々に頭が冷え、まともな思考回路ができるようになってきた。

信じられない。

この俺が…腐男子であるこの俺が…よりによって男にキスされたのだ。
これほど屈辱的な事はない。

茅くんの相手が可愛い男の子、もしくは成川くんなら奇声を発しながらカメラを構えていた。

だが非常に残念ながら俺だぞ?
同じ腐男子なら今の俺の気持ちが分かるはずだ。


「………意外な隙があったもんだね…椿ちゃんてば」

「……………」


茅郁巳…


「ぜってぇ許さねぇ…」

「落ち着け椿…あの野郎をぶっ殺すのは大いに賛成だがここで手榴弾はマズイ…」

「じゃあ改造スタンガン(10万ボルト)なら良いのか武」

「全っっ然良くない」


吹っ飛ばす気満々の俺を慌てて引き止め、手榴弾とスタンガンを没収された。

何だよ、なんでダメなんだ。

まさか武の奴…茅(もう呼び捨て)に惚れてるんじゃ…
武…俺はお前が惚れた相手なら祝ってやりたい。
たがあんな誰彼構わず手を出すような奴は考え直してくれないだろうか。

俺はお前の幸せを1番に願ってんだから。


「変なこと考えてんじゃねぇぞコラ。俺が危惧してんのはここでお前が暴れたら生徒会連中が黙ってないってことだ」

「…………ああ…成る程」


確かに、茅を見ると何故かめちゃくちゃキレている成川くんにシメられている。

とどめを刺してあげたいが、そのせいで生徒会連中に色々聞かれるのも嫌だ。


「とりあえず、ここは成川に任せて…」

「なあ…武」

「あ?」


成川くんたちを見ていた武が俺へ視線を移し、俺は若干俯きがちに武を見遣る。


「………危惧って…何だ?」

「この馬鹿!!」


え、ちょっとヒドイよ武くん。
ただでさえあの野郎にキスされてブロークンマイハートなのにその上馬鹿呼ばわり?

いつもならさらっと流せるが今の俺には少し効いた。

ああもう、何でこうなったんだ…
俺があの時、璃人さんと須藤さんの元を離れたのが原因なのか。
つまり自業自得ってやつか。


「椿!お前もちゃんと抵抗しろよ!そういうのは簡単にしちゃダメなんだぞ!」

「ふふ…雫は真面目だね」


さすが王道的思考、と言いたい所だが俺は悪くない。
つーか俺被害者。
もうみんなさっきの事は忘れてくれ、頼むから。


「ま、そんな訳だから。これからよろしくな、ハニー」


なんて考えているといつの間にか俺の横に移動してきた茅が俺の肩に自分の腕を乗せ、今度は頬にキスしてきた。






「…っ誰がてめぇのハニーだああああ!!!!」

「どわー!!!」

「一本!!ナイス一本背負いだよ椿ちゃん!!」


後悔先に立たず。






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