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押し付け。




「………何やってんだ須藤さんは…」


荷台の中に入ってからもう20分は経つぞ…

まさか本当に武がいて、助けに来てくれた須藤さんにその怖さからか衝動的に抱き着いてしまい、そんな意外な反応をした武に須藤さんは驚きつつ背中に手を回し…あんなコトやこんなコトやそんなコトをしているんじゃ…!?

よっしゃ!ktkr!
ならばさっそく覗きに行かなくては!




パァン!!


「っ!」


イキイキとしながら踏み出した足のすぐ横の地面がチュインッ、という音と同時に大きく爆ぜた。

下手くそなのかわざと外したのかは分からないが、音のした方向へ顔を向ける。


「そこまでだ…」

「っ椿…!」


こいつらの仲間だと思われる一人の男が、両手を縛られた武と須藤さんの一歩後ろで俺に銃口を向けていた。

荷台の中にいたのか…面倒な…


「俺たちの計画を邪魔しやがって…余計な事に首突っ込んで無事に帰れると思ってんのか?」

「………武。怪我は」

「は?いや特に…」

「椿ちゃーん。武くん痣が出来てるよ〜」


男がどや顔で語りかけてきたが軽くスルーをして武に近寄る。

痣…だと…?
たかがモブ風情が味な真似しやがって…
緊縛プレイなんてお父さん許しませんよ!


「俺を無視するんじゃねぇよ!これが見えねぇのか!武器を捨てろ!」

「武器なんて持ってないけど?」

「うそつけぇ!!」


まぁ嘘だけどさ。

拳銃を振り回し、俺に向けていた銃口を武のこめかみへ当てた。


「………人を殺す度胸もないくせに人殺しの道具を武に向けるなよ」

「あ?何か言ったか」


俺は見えないように口元を緩め、男の後ろの方を見ながら大きく手を振った。


「先生!!ここです!!」

「っ!?」


男がバッと自分の背後へ顔をやった瞬間、右足を横から蹴り上げた。
靴に仕込んだナイフが勢いよく男の足目掛けて飛んでいき、太ももへ刺さる。


「あがぁあ゛あ゛ああ゛あ!!!!!」

「須藤さん!」

「ぅおっ!」


自分に刺さったナイフを見て錯乱している内に須藤さんが武の首根っこをひっつかみ、男から引きはがした。

俺は直ぐさま武に駆け寄ると、両手の縄を切り、自由にさせる。


「……よく俺が自分で縄切ったって分かったね椿ちゃん」

「だって須藤さん――"慣れてる"でしょう?」

「まぁ、ね…」


わざと強調して言うと、須藤さんの口元が面白そうに上がった。
うーん…やっぱタチの悪い方の人間だな、この人。

不意に武の方へ顔を向けると、ちょうど目が合い、ピクッと武の肩が揺れた。


「…よしよし」

「……………何してんだバカ」


俺はそれを見てニッコリと笑い、染めている割にあまり傷んでいない金色の髪を撫でる。

一瞬、武の顔が泣きそうに歪んだのが見えたが気付かないフリをした。
誰だってこんな事になれば怖いに決まっている。


「…いーな〜俺も撫でて、椿ちゃん」

「剣山を手につけてからで良ければ」

「………………遠慮しときます」


















__________


「――で?」

「で?って何ですか須藤さん」

「こいつ等、どうすんのさ」


"こいつ等"と言って示したのは人身売買の男たち。
とは言っても、かろうじて意識があるのは俺が足にナイフを刺した男だけなんだけど。
全員を縄で括り、意識のある男を見遣る。


「そりゃあ…警察に引き渡すしかないでしょ」

「つーか他にないよな」


俺の言葉に武が頷きを返す。
警察、と言った瞬間に男が大きく肩をビクつかせたが、すぐに俺を睨みつけた。

おー中々肝が据わっているじゃないか。
こういう奴を平伏させるのがまた楽し…ゴフン!ゲホっ!

…じゃなくて。


「――けど…色々と"聞きたい事"もありますし…警察に渡す前に俺の知り合いへ引き渡しますね」

「………俺の前でそんなこと言っちゃって良いのかな?」

「さぁ…何の事やら」


さて、そろそろ時間切れだろう。
これ以上関わったら…計画に支障が出るし。



「――い―!!!」


「ん?」

「今、何か…」


「お―――!!大丈――!!」


真っ暗な森の奥から聞き覚えのある声と複数の足音が響く。

それを聞いて俺は人知れず口元を上げた。


「おーーい!!!無事かー!!」


「…成川?」

「黒モジャ君?」


……黒モジャって何だ?

黒髪を靡かせ、手をぶんぶんと振りながら駆け寄ってきたのは成川くんだった。
その後ろには金魚のフ……生徒会の面々と璃人さんたちがこちらへ向かっている。

良かった良かった、ちゃんと合流できたんだな。


「無事か、椿くん…」

「璃人さんこそ」

「うわっ!?なんだこいつ等!!何でこんな所で縛られてんだ!?」


縛られた男たちを見て成川くんが大声で叫ぶ。


「おい」

「……あ?」

「どういう事か説明しろ」


怪訝そうに俺を見ながら会長が吐き捨てると、皆の視線が俺に向けられた。

おいおい何だよ視姦プレイ?
言っとくけど俺にそんな趣味ないからな!

そういうの成川くんでお願いします!
皆(俺以外)で成川くんを犯すってのも良いんでない?

ひとまず、今はこの場を何とかしないとな。




「……これは――捕われの身となった須藤さんを助ける為に武がやりました」

「「……………………は?」」


ポカン、と口を開け、間抜け面を晒す二人が同時に俺の方へ顔を向けるが、他の皆の視線は既に二人へと移された。

もちろん、璃人さんと不良くんは何言ってんだこいつ、とでも言いたそうに俺を見ている。


「ふぅん…オメーが、ね…」

「すっげーな武…!!お前意外と強かったんだな!」

「詳しく聞きたいなぁ」

「え、いや……違っ…」


よしよし…みんな武に興味を持った…
これで武と成川くんの仲がグッと縮まるはずだ。
武が強い、という事になれば成川くんのボディガードとして生徒会補佐に選ばれたりなんかもあるかもしれない。

その為に一芝居うってもらうぞ二人とも…


「ちょっとちょっと、どういうこと椿ちゃん?何言っちゃってんのさ」

「細かい事は気にしないで俺に合わせて下さい須藤さん」


生徒会の連中が武を質問責めにしている間に須藤さんが小声で俺に近寄ってきた。
同じように小声で返すと、須藤さんはしばらく考えてから再び俺へ笑いかける。


「…分かった。よく分からないけど…君のお願いを聞いてあげるんだし、俺の言う事も聞いてもらえるよね?」

「…………………俺にできる範囲の事でしたら」

「了ー解」


チッ抜目ないなこの人。
まぁいい、いざとなったら記憶を消せば…ごほん。


須藤さんが俺の肩を一度叩き、交渉成立ね、とウインクをしてきた。
様になっているのがむかつく。

このイケメンめが!






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