理由。
雫side
―――編入3日前。
「しーちゃん」
「何?母さん。てかしーちゃんってやめろよ」
「ちょっといいかしら?」
「聞いてないし…」
俺をしーちゃんと呼んで部屋に入ってきたのは俺の母親である成川真紀。
見た目はクリクリとした可憐な美少女だが、その中身は●●歳だ。
いい加減にフリフリのワンピースはやめて欲しい。
「何か言った?」
「母さんは可愛くて素敵だなと言いました!」
「いやん!うれしーありがとう!」
こ、怖ぇー…
母さんは昔レディースの頭だったらしい。
こんな顔で暴れまくっていたとか信じられないだろ。
ついた通り名が『ブラッディドール』
血だらけ人形、だそうだ。
おかげで逆らえない。
「それで?話って?」
「あのね、しーちゃんには全寮制の高校に行って欲しいの」
「は!?今更!?俺もう公立の高校受けたじゃん!」
本当に突然、信じがたい話を持ち込んできやがった。
俺はすでに公立に受かっているというのに今更別の学校?
しかも全寮制?
ぜってぇヤダ!
「ダメよ。もう手続きは済んでるし明峰学園への入学手続きも済んでるわ」
「なんでだよ!俺の意見オールシカト!?つーか何で!?」
「うふっ実はぁ…福引で世界旅行が当たっちゃって〜」
「世界旅行!?」
福引で世界旅行ってデカくないか?
とまぁ、そんな事を気にしている場合ではない。
全寮制ってことはずっとあっちに住まなきゃいけないんだよな!?
集まりとか行けないじゃんか!
「アタシはダーリンと2人で行くからしーちゃんは1人になっちゃうでしょ?」
「べ、別に1人でも」
「何言ってんの、こないだ卵焼き作って炭にしたじゃない。その前の焼きそばは箸が折れるくらい硬かったし」
「う…」
返す言葉が無い…!
どうしても料理だけは無理だ。
料理もそうだが裁縫とか家事も壊滅的にヤバイ。
「しーちゃんにやらせると家が無くなっちゃうから全寮制なの」
「え〜…でもさー」
「ぐだぐだ言うんじゃねぇ」
「はい!」
ごめん、みんな…
母さんには逆らえないや。
「あ、行く時はコレとコレ付けてね」
「……何でヅラと瓶底眼鏡なんか…」
「しーちゃんはアタシに似て可愛いからね」
可愛くないし。
とは言っても俺は母さんによく似ているらしく、かなりの女顔。
コンプレックスだ。
「だからってコレ関係あんの?」
「男子校だから襲われちゃうわ」
なるほど。
男子校だから……
え?
「だ…男子、校…?」
こうして俺は(強制的に)明峰学園に編入することになった。
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