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雫side
「あーもう、最悪!マジありえねぇ!」
母さんからいきなりこの高校に入学させられるし、こんなもっさりとしたカツラとださい眼鏡も着けられるし、極めつけはあいつ!
案内時間に遅刻したからって何分も待たされて、別の案内役として来たやたらキラキラした奴!
なんで『ガイラ』の副総長がいるんだよ!
聞いてねぇし!
バレないように慣れない敬語を使ってみたが、すぐにバレた。
まだ俺の正体はバレてないけど…
でも、いきなりキキキ、キスなんかしてきやがって…
咄嗟に殴って逃げてきた。
見つかったら今度こそリンチされそうだ。
「とにかく、早く俺の部屋とやらに行かないと…」
渡されたカードに507と書いてあった。
今俺の目の前に512があるってことはもうすぐか。
510…
509…
50、
カチャ。
ゴッ!
「うがっ!」
「えっ」
キョロキョロと見渡しながら歩いていると、急に目の前が暗くなり、頭に激痛が走った。
痛い。
痛すぎる。
薄れゆく意識の中で、心地のいい声が聞こえていた。
◇
「…………ここは…」
「俺の部屋」
「えっ」
ぼんやりと目を開けると見慣れない天井。
小さく呟くと、気絶する寸前に聞いた声がして俺は飛び起きた。
「あっバカ、急に起きたら、」
「うっ…」
飛び起きた瞬間にやって来た目眩。
やばいと思ったが、俺の体は倒れなかった。
「はぁ、だから言っただろ…」
ゆっくりと顔を上げる。
俺を支えてくれている男の顔を、俺は初めて見た。
「うわ…超カッケェ……」
「は?」
「あ!?いや!何でもない!!」
思わず声に出ちまった!
でも、それぐらい男の顔は格好良かった。
俺の身長は約168センチ。
低くはない…と思いたいが、その俺が結構見上げるくらいだから多分180はありそうだ。
すらりとした細身に長い脚。
支えてくれた時に分かったが、意外と筋肉質。
そして整った顔。
「大丈夫か?顔が赤いけど」
「だだだ大丈夫!すす、すんげぇ大丈夫!」
どもりすぎだろ俺!
男前さん(勝手に命名)は大丈夫だと言う俺を見て首を傾げるが、なら良かった、と言って笑った。
か、かっけぇ…!
俺にキスしてきたあの変態ヤローなんかより全然カッコいい…!
ピンポーン
「?」
「お、来た来た」
部屋に響いたチャイムに、男前さんは顔を綻ばせ、玄関の方に向かってしまった。
そういえば、ここは男前さんの部屋なんだよな?
って事は俺の同室者って男前さん!?
「心臓、持つかなー…」
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