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雫side






「あーもう、最悪!マジありえねぇ!」


母さんからいきなりこの高校に入学させられるし、こんなもっさりとしたカツラとださい眼鏡も着けられるし、極めつけはあいつ!
案内時間に遅刻したからって何分も待たされて、別の案内役として来たやたらキラキラした奴!

なんで『ガイラ』の副総長がいるんだよ!

聞いてねぇし!

バレないように慣れない敬語を使ってみたが、すぐにバレた。
まだ俺の正体はバレてないけど…

でも、いきなりキキキ、キスなんかしてきやがって…

咄嗟に殴って逃げてきた。
見つかったら今度こそリンチされそうだ。


「とにかく、早く俺の部屋とやらに行かないと…」


渡されたカードに507と書いてあった。
今俺の目の前に512があるってことはもうすぐか。


510…

509…

50、



カチャ。




ゴッ!


「うがっ!」

「えっ」


キョロキョロと見渡しながら歩いていると、急に目の前が暗くなり、頭に激痛が走った。

痛い。
痛すぎる。

薄れゆく意識の中で、心地のいい声が聞こえていた。

























「…………ここは…」

「俺の部屋」

「えっ」


ぼんやりと目を開けると見慣れない天井。

小さく呟くと、気絶する寸前に聞いた声がして俺は飛び起きた。


「あっバカ、急に起きたら、」

「うっ…」


飛び起きた瞬間にやって来た目眩。
やばいと思ったが、俺の体は倒れなかった。


「はぁ、だから言っただろ…」


ゆっくりと顔を上げる。
俺を支えてくれている男の顔を、俺は初めて見た。


「うわ…超カッケェ……」

「は?」

「あ!?いや!何でもない!!」


思わず声に出ちまった!

でも、それぐらい男の顔は格好良かった。
俺の身長は約168センチ。
低くはない…と思いたいが、その俺が結構見上げるくらいだから多分180はありそうだ。

すらりとした細身に長い脚。
支えてくれた時に分かったが、意外と筋肉質。

そして整った顔。


「大丈夫か?顔が赤いけど」

「だだだ大丈夫!すす、すんげぇ大丈夫!」


どもりすぎだろ俺!

男前さん(勝手に命名)は大丈夫だと言う俺を見て首を傾げるが、なら良かった、と言って笑った。

か、かっけぇ…!
俺にキスしてきたあの変態ヤローなんかより全然カッコいい…!




ピンポーン



「?」

「お、来た来た」


部屋に響いたチャイムに、男前さんは顔を綻ばせ、玄関の方に向かってしまった。

そういえば、ここは男前さんの部屋なんだよな?
って事は俺の同室者って男前さん!?


「心臓、持つかなー…」






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