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あずきの左目。








「ぅ……っ」


「!あずき?どうしたっ」


「な、なんでも…な……大丈…ぶ…」



あずきと一緒に5階を走り回っていた時だった。

突然、あずきが左目を押さえながらしゃがみ込んでしまった。
寄せられた眉と額に浮かぶ汗がどれだけ苦しいかを物語っている。



「左目が痛いのか」


「………っ」



とうとう話せないほど痛み出したのか、目をキツく閉じて小さく頷いた。


眼帯をしている理由はあえて聞いていなかったが、こんなにも痛むのは少しおかしいだろう。


いや、それより…左目から"何か"を感じるのは気のせいなのか…?




「……あずき。嫌かもしれないが、傷を見せてくれ」


「……?」


「確かめたいことがある」


「………」



荒い呼吸を繰り返しながら不安げに俺を見てくる。

しっかりと目を合わせ、左目を押さえているあずきの左腕にそっと手を添えた。




「大丈夫。俺を信じろ」




はっきりと告げると、あずきの見開かれた右目が微かに潤んだ気がする。

頷いたあずきの左手が離れ、眼帯を外した。








「これは…」



今度は俺の方が驚き、息を飲む。

あずきの左目は、一言で言えば赤かった。
瞳が、ではない。


目は閉じられ、その瞼が赤かったのだ。

真ん中に血のような真っ赤な玉が埋められてあり、周りには血管みたいな根が張っていた。



「…まだ痛むか?」


「少し…」



ドクンドクン、と脈を持っている左目に俺は手を当てて、小さく呪を唱える。








「――…痛く、ない…」


「………」



淡い緑色の光があずきの左目を覆い、あずきの呼吸が正常に戻った。



「友里、くん…?」


「…………」



俯いている俺にはあずきの顔が見えない。
けど声がとても不安そうだった。


「あずき」


「は、い…」


「"それ"はいつできた?」


「えっ?…えと、…8年前くらいに…」



8年前といえばあずき達は七歳。

…ぁあ…やっぱりそうだったか。


できれば、そうじゃなければ良いな、と思っていた。



「分かった。話は後でしよう。校内の鬼を捕まえるぞ」


「え?でもどうやって…」


「任せろ。少し、あずきの力を使うけど良いか?」


「それは…大丈夫…」


(鬼が誰かに"倒される"前に捕まえなけば…)



周りを見渡して、広そうな場所を探す。



「あずき、この近くに何もなくて広い場所はあるか?」


「あ、ここは5階だから…あの突き当たりを左に曲がった所に鍛練場が…」


「よし、行くぞ」


「…うん!」






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