銀色の髪を持つ少年。
―――１３年後―
「―――――…臨 兵 闘 者 皆 陣 列 在 前………妖魔浄浄如律令…」
パンｯ
『………っ』
「……おやすみ」
『…………ぉや……す、――…』
目も開けていられない程のまばゆい光の中で、人の姿をした"人ならざるもの"は笑みを浮かべ消えていった。
銀色の髪を持つその少年は消えいく光をいつまでも見つめていた。
「…終わりましたよ。神主さん」
そのまま振り返らずに、話しかけると後ろの物陰から一人の男が出てきた。
大分若そうなその男は不思議なものでも見るような目つきで少年を見遣る。
「…何か？」
「いや、何だか悲しそうな顔をしていたからさ」
「悲しい、ですか？」
そこで初めて少年は振り返り、男と目を合わせた。
「うん。妖が消えて君も悲しんでいるのかと思ったよ」
「………」
「僕は悲しい」
男は星の広がる夜空を見上げ、眉を顰る。
まるで泣くのを堪えるのかの様に…
「……貴方は優しいのですね」
「君もだろう、友里くん」
「俺は…よく分かりません」
「分からない？」
少年は首を傾げる男をチラリと見遣り、また夜空へと顔を向ける。
「…俺が祓い屋なんてものをやっているのは、あくまでお金が必要というだけなんです」
「…何の為に？」
「借金返済の為です」
「そうか借金の……………………ん？…借金…？」
男は何ともいえない表情で隣にいる少年をマジマジと見つめる。
少年は気にも止めずに、どこか遠い目で夜空を見ている。
「放浪親父の莫大な借金を返すんです」
「………君…若いのに苦労してるんだね…」
「面倒事には慣れましたよ｡それに――…」
「何だい？」
「――いえ｡何でもないですよ」
そう言ってふっ、と笑う少年の横顔はとても十七歳には見えないほど大人びていて、男は無意識に少年の頬へ手を添えた。
「…神主さん？」
「…何か困った事があったら僕の所へ来なさい、友里くん」
「……はい…ありがとうございます」
その少年は、とても綺麗に笑った。
プロローグ:END
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