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詩/小説
世界に触れたとき(灼/灼燐)




昔から、世界は一つ一つ仕切られた箱の集まりのようだと感じている
(私には箱がない、外に放り出されたようだ)
そんな感覚を幼い頃は持っていた
でも、今は違う
貴方が来てくれたあの日、私は世界の中に入れたのだから

普通ではない力を持ち、妬みや憎しみを向けられ
命さえ奪われそうになる
そんな私の周りにはいつも汚いモノが転がっているだけ
いっそ、自分が完全にきえてしまえればいいとさえ思っていた
そんなとき、本当の貴方が私の前に現れた

『サクラ、お前力隠してんだろ』

口調は変わらなかった
ただ、纏うチャクラが私と同質のもので
その場の空気までもが彼のものとなっているように感じた

『…あんたも、そうみたいね』

まあな、と軽く返したシカマルは唐突に話の本題を持ち出した

『俺と暗部に入らないか』

『なんでよ』

『箱の中に入るため、だろ』

俺もお前と同じだ、と言ったシカマルに、きえたいという切望は
一瞬にして掻き消された
それと同時に覚えた、箱が創られていく感覚
私は差し伸べられた手を強く、しっかりと掴んだ



いつだって私達は二人で支えあってきた
それでも、どうしようもないことだってあって、
暴走する力、それは幼い私達にも、親達にさえ止めることはできなかった
人の心(なか)が見れるなんて他人が聞けば、いいな、とか
面白そう、とかそんな声が返ってくるのだろうけど
昔から見たくもないのにそんなものが見えてしまう私にとって
見えないことの方が羨ましかった
気を緩めれば人の汚い感情が頭に直接入ってくる
その中には自分に向けられたものもある
そんな、自分が壊れてしまいそうな状況で唯一気を抜いていられたのは
チョウジの隣だけだった
只、私を気に掛けて強くなろうと陰で努力していることに
心を痛めはするけれど

そんなある日、
外部からの干渉を遮断してある私とチョウジの部屋には窓からの侵入者があった
それはどちらかの親でも、私達に敵意を持つ者でもない
黒と赤の色彩
私達はその二人の、強くはっきりとした存在をとてもリアルに
何かに引き込まれるように感じた

『‥誰よ、あんた達』

不思議な面を被り顔が見えない相手に警戒を強めつつも、
何故かその面の下を見てみたいという衝動に駆られた
私の斜め後ろに居たチョウジを窺い見れば、私と同じ顔を浮かべていた

『誰、なんてねえ』

『だよなあ』

そう顔を見合わせた二人はおどけた調子で、面の下では
笑っているのが聞こえた

『お前の力で見てみろよ』

『‥!』

驚いた
私の力のことは家族以外知らない筈だったから
それでも、私にはこの二人が私達を壊そうとする存在には思えなかったから
戸惑うことなんてせずに力を、解放した
そして流れ込んでくる二人の記憶や感情
その中には温かい記憶なんて一つもなかったけれど、
冷たい感情だって一つもありはしなかった

『‥シカマル、サクラ』

ああ、そうか
私達は決して二人きりなどではなかったんだ
そして吸い寄せられるように
私と、チョウジも、二人へと手を伸ばした



信じられるのは自分達だけ、そう思っていた頃
幼かった、そう言ってしまえばそれまでかもしれないが
その頃の俺達は、死を真剣に、純粋に、望んでいた

『ねぇ、なんで私達は生きてるの?』
『ねぇ、なんで私達は死ぬことが出来ないの?』

白い少女の問い掛けに隣に座る少年は首を横に振った

『生きてる理由は分からない』
『ただ、俺達が死ねないのは、この鎖に繋がれているからですよ』

そう言った少年の視線の先には、二人の両手足を縛める八本の鎖があった
それは、二人の手が印を組むことが出来ない様に
二人の足が動きだす事のない無い様に
とても強固に繋がれた鎖

『じゃあその鎖が無かったら、お前たちはどうするんだ?』

突然響いた声と共に、暗かった部屋に光が差し込んだ
光の方向には二つの影
少女が咄嗟に見開いた目には、どこか自信に満ちた二つの笑みが映った

『死ぬのか?』

男の質問は続けられる

『それが叶うなら』

『それが私達の望みなの』

少年と少女がそう答えると、今度は今まで黙っていた女が口を開いた

『本当にそれでいいの?』
『貴方達はまだ、世界の鱗片にさえ触れていないかもしれないのに』

女の言葉に、二人の胸がどきりと波打った
そして、次に届いた言葉に、頭が揺れる程の振動を感じた

『なぁ、希望をみたことはあるか?』

男の言葉を女は変わらず微笑み聞きながら
手足に絡みつく鎖を切り捨てた

『ねぇ、どうするの?』

自由に動くようになった手足を見て
二人は大きく足を踏み出した


それは、皆が世界を求め、手に入れたとき
自ら動いた、その瞬間




*end
出会いのお話
矛盾点は見てみぬふりをお願いします(笑)

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