詩/小説
笑顔を見せて(他/スレナルサク)
俺の願いが叶うことはないのだろうか
俺の願いは君の本当の笑顔が見たい、ただそれだけだというのに
「サクラちゃんっ!おはよーだってばよ!」
朝早く、いつもと同じ下らない任務のために集合する
おはようの声は大きく、目一杯の笑顔を彼女に向けた
「おはよう、ナルト。みんなまだ来てないのね」
そうすると、君は上辺だけの笑顔を俺に向けてくれるんだ
心のない、そんな笑顔を
「サクラちゃん、大好きだってば」
こんなことを言ってみたってそれは変わらない
「馬鹿なこと言うんじゃないわよ、全く」
そう言いつつも顔にはちゃんと笑みが残っているんだ
「‥サクラちゃん、俺はサクラちゃんのためならなんだってするし、サクラちゃんの傍にずっと居るってばよ。だから泣いてもいいんだ、おもいっきり泣いて、その後笑顔を見せてくれればそれでいいんだってばよ」
「何言ってるのよ。私は泣かないし、いつも笑ってるじゃない」
違うんだ、違うんだよ
音がするんだ
何かの罅割れる音が
「だったら泣きそうな顔で笑わないでよ」
早く、気付いてよ
「‥ナルト、あんた何者?」
少し間を置いてからのその質問は動揺の表れだと感じた
彼女は演じることが上手いから、気付かれることを予想もしなかったのだろう
「俺は何者でもない。ただサクラちゃんの幸せを願う者、サクラちゃんが俺の世界なんだ。サクラちゃんが悲しいなら俺も悲しい、サクラちゃんが幸せなら俺も幸せになれるんだよ」
「な、によ。そんなのあんたの我が儘じゃない。何で私があんたの願いなんか叶えなきゃいけないのよ!私は、本当の笑顔なんて分からないし、この笑い方しか知らないわ」
知らないんじゃない
ただ素直になれないだけだ
気付いて、そうしないと
音が大きくなってくるんだ
「サクラちゃんの思う通りに素直になればいい、俺はどんなサクラちゃんでも大好きだから」
「ばかみたい‥」
その声は震えていて
それでも君が泣くことはなくて
「ありがとう、ナルト。でも大丈夫、今でも十分素直なつもりだから」
大丈夫、もう一度そういった彼女の顔はまだ泣きそうで笑顔を作っていた
そして、もうひとつ俺の耳に届いた
割れる音
end
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