詩/小説
任務途中の帰り道(灼/シカサク)
ここは木ノ葉南西の森の中
時刻は只今午前二時をまわった所である
風もなく全てが眠りに就いている化のように静まり返る森に、二つの空気を切る音
それと、小さな話し声
「おい、灼桜」
「何よ、闇黎様?」
低く限り無く不機嫌な男の声
その呼びかけに、それとは全く対称的な可愛らしい笑い声が響く
「何笑ってんだよ。今、俺達が走ってんのはお前が抜け忍始末しなかった所為だよな?」
くすくすと尚も響く笑い声
面に隠れて見えはしないが男の表情は厳しいものとなっているだろう
そもそも闇黎と呼ばれたこの男が何故これ程にも不機嫌なのかといえば
一時間前、先程から可愛らしく笑っている女、灼桜が受けていた抜け忍の始末という任務を抜け出し、その後始末をさせられているからだ
「灼桜、今日は取り敢えずこれで終わりだからちゃんとやれ」
そう闇黎が言うと笑っていた杓桜は急に笑みを消し、無表情になった
「嫌、無理」
「即答すんなよ、面倒くせぇ」
面白い程の即答に闇黎は頭を掻き溜息を吐いた
そんなことは意にも介さず杓桜はまた口を開く
「だって仕方ないじゃない、任務の量も書類の量も多すぎるんだもの。人間の出来る範囲を越えてるわよ、ねえそう思うでしょ?そう思うわよね?私今5日は寝てないの。そんなんで任務できると思うの?私は無理ね。もう帰ってもいいかしら」
灼桜は酷い剣幕で最近の鬱憤を晴らすようにノンブレスで言い切った
「俺も今日で5日目だ、でもだからって俺の仕事まで増やすなよ。ちなみに任務が終わるまで帰るなよ?」
はぁ、とまた溜息をひとつ
闇黎は灼桜を帰らせる気は全くないようで
そんな闇黎に灼桜は小さく舌打ちをした後、何かを思いついたようににやりと笑った
「それに最近闇黎と、‥シカマルと会えなかったから任務だけでも一緒にいれたらなって思ったの。だけどやっぱり家で二人でゆっくりしたいわ」
「…サクラ」
闇黎改め奈良シカマルは灼桜改め春野サクラの名を呟き、難しい顔をして暫く固まった
そして数十秒後
シカマルは唸りながらも両手を挙げた
それは降参の意で
「分ァったよ、好きにしろ」
口では好きにしろなどとぶっきら棒な言い方をしていても、しっかりと部下への連絡をしようとしているシカマル
その顔はどことなく嬉しそうにも見える
そして少しすると暗部待機所に待機中の部下達に無線が通じたようで、シカマルは笑みを深めた
「待機組、聞こえるか?お前等に任務だ。内容は今総長と俺が追っている抜け忍の始末、現在の位置は里中心部から南南東34km程来た所だ」
(御意、しかしお二人はどうなさるのですか?)
「面倒くせぇが総長が倒れて追跡不可能なんだ。多分単なる過労だと思うんだがな」
(そうですか、了解しました。それでしたら火影様にお二人の一週間程の休暇申請をしておくのでゆっくりお休み下さい)
「あぁ、宜しく頼む」
連絡を終え、シカマルは無線機を切りサクラの方を見た
「いい部下を持って幸せだな」
「ちょっと聞こえたけど、本当に気が利く部下を持ったわよね」
そう、顔を見合せて楽しそうな笑みを浮かべ合った
「大好きよ」
そのままストレートに言葉を向けるサクラに対し、シカマルは照れ臭さを紛らわすように少し顔を背け「‥俺も」とだけ返した
いつもの反応に面の中で小さく笑う
そして、印を組み
二人が向かうのは、仲間が待っている
灼燐だけの、箱の中
*end
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