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詩/小説
それは泣きたくなる程に(灼/灼燐)




死の森中心部
結界で姿を隠された家
その暗部零班、灼燐の六人が住む場所は、いつもののんびりとした雰囲気とは違いとても騒々しいばたばたとした時間が流れている
人口密度も普段の倍以上は狭いだろう
リビングには三百枚は有ろうかという紙の山
それが、三ヶ所にどかんと置いてある
そしてその一ヶ所ずつには今にも発狂してしまいそうな勢いで紙の束を処理しているサクラ達と、泣きそうになりながら書類を運ぶ黒ずくめの部下達

「‥総長、上層部からの書類です」

「いらないわ、くそ爺共に返してきなさい。邪魔くさい」

「すみませんっ、無理です!」

年に1、2回このような書類が多すぎて暗部の執務室に入らず家にまで持ち込まなければならなくなるという状況に追い込まれる
書類を運んできた若い新米隊員は恐らく初めて見るだろうサクラのまさに鬼のような形相に怯え、すみませんっと言いながら書類を置きその場を離れた

更にもう二ヶ所の山の中心にはシカマルとヒナタがサクラ同様、部下に怯えられながら事務処理に励んでいた

「おい、何で解部の解読書類までこっちに来んだよ。なんだ?俺の部下は能無しなのか?なあ」

解部室長を兼任しているシカマルは横に控える隊員にそう問い掛けた
こちらはこの状況が初めてというわけではないらしく「‥どうなんでしょうね」と多少震えながらも軽く答え、小さくため息をつく
そして横に並ぶ山へと目を見やった

「報告書だの、申請書だの、なんでいちいち書かなきゃいけないのよ。お前等が聞きに来ればいいだろうが‥」

一方、視線の先のヒナタに限っては口調までもが変わりぶつぶつと黒い空気を放っている
これはもう慣れる慣れないの問題ではなく怖い

そしてそんな状況の中、更に追い討ちをかけるようにまた別の隊員が鬼の住処と化しているリビングへと足を踏み入れ、恐る恐るといった感じで口を開いた

「‥火影様からの伝令です。総長には処理班の任務が、副長と白露様には上忍任務が入ったため早急に、私の所へ来い、とのことです」

数秒、伝令を受けた三人は時間が止まったように全身の動きを停止させた
そしてその直後に放たれるどす黒いオーラにその場に居る者は皆身を竦ませた

「‥銀狼はいないの?」

一番に動いたのはサクラだ
銀狼、つまり臨時隊員でもある自分の担当上忍を使いたいと思ったのだろう
しかしその考えが叶うことはなく

「すみません、はたけ上忍は別任務に行っています」

それにサクラはな舌打ちをし、その横からヒナタの「何の為の臨時だよ」呟きが聞こえる

「他の奴らはどうなんだよ」

シカマルが訪ねるが、それにも首が横に振られた

「他の方も今日はまだ‥‥」

だが隊員は一瞬止まり、そういえば‥と何かを思い出したように言った

「そろそろ銖鞠(シュコウ)が帰るころかと‥」

だが、またしても隊員の言葉は止まった
というより、ドアの外から入ってきた大きな声によって遮られた

「やっと見つけた!!任務行くわよっ!」

「俺は今終わったばかり‥‥うわっ」

「いいから行くのっ!」

「‥全く何なんだ」

小さく玄関の扉が開く音、それに続きテンテンの大きな声にネジの疲れた声
そして、最後に扉が派手に音をたてて閉まり、静かになった

「‥‥やっぱり全員無理のようです」

隊員は三度目の発言を苦笑いを浮かべながら最後まで言い切った
それにサクラ達は顔を見合せ、こちらもやはり苦笑い

「‥仕方ないわね」

「行くか」

「‥‥ちっ(舌打ち)」

全員まだ不服そうだったがもうどうでもいい、という風に諦めてリビングからゆっくり出ていく

「行ってらっしゃい」

「‥‥あれ大丈夫なの?」

その後、部屋に残ったのはまだ大量にある書類、それとのんびり薬を作るチョウジと報告書を一枚書いているイノだけ
部下達は処理済みの書類の整理をいそいそと始めた




*end
最終処理班の[それは怒りを煽るもの]に続きます!

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あきゅろす。
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