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短編倉庫
僕らのモラトリアム (六い



「お前は留三郎が好きなのか?」

そう問いかけると奴は驚いたように顔を上げ、私を見た。

「……何を言っているんだ?」

訝しげに眉を潜め、私の顔を覗き込んでくる。

「…別に」

大きな目から顔を逸らし、意味もなくペン立てから筆ペンを取った。

潮江文次郎とはもう15年の付き合いになる。
産まれた病院から一緒だった私たちは当然のように同じ保育園に通い、幼稚園に通い、小学校に上がって中学三年間を共に過ごし、来年、同じ高校に進学する予定だ。
私たちはいつも一緒で、それが当然だった。

しかし受験生となった今年、どういうわけか転校生がやってきた。

食満留三郎

転校初日にドブにはまっていた伊作の面倒を見てから私たちの間に入ってきた男だ。

「この際、相手が男だ女だという下らない議論は無視する。あの馬鹿はやめておけ」

食満が来るまで、文次郎は口論のひとつもしたことが無かった。
無駄に熱い男だがどちらかというと議論派で、どんな相手にも論理的に筋の通った物言いをするものだからケンカどころか口論にさえなることが無かったのだ。

もちろん最初から取っ組み合いになったわけではない。文次郎はいつものように言葉で諌めようとしていた。

しかし食満はそんな彼の言葉を「だからなんだ」と鼻息で吹き飛ばした。

これには私でさえも唖然とした。
馬鹿…失礼、破天荒で滅茶苦茶な食満は個性派揃いと言われる私たちに無いものを持っていた。

以来、文次郎は食満と顔を合わせる度にケンカをするようになった。
ケンカを下らないと鼻で笑っていた奴が嘘のように感情を剥き出しにして殴り合うのだ。

私にさえ見せたことのない感情を、あの男はいとも容易く引き出した。

気に食わん。

「…別に、俺は食満のことなんか」

「好きじゃないと言い切れるのか?」

「………嫌いじゃない」

「じゃあ好きなんだろう」

「違う。お前どうしたんだ、おかしいぞ」

ああ、おかしいさ。
おかしくしたのはどこの誰だ。

「とにかく、俺はあいつのこと友人としか思っていない!何がどうしてあんな奴を、す、好きとか…」

自分の頬が赤く発熱していることにこいつは気づいてないのだろうか。

「そんなことより今は勉学だ!受験を前に愛だ恋だなど笑止!今は目の前の試練に向かうべきだ!」

サムライかこいつ。

どこまで鈍感なんだと息を吐きかけたとき、それに、と文次郎が続ける。

「今は、お前とこうしている方が好きだから…まだ、そういうのはいい」

食満はお前のこと間違いなく好いているけどな。なんて言葉は飲み込んでおく。

いずれこいつは自分の想いに気づくだろうし、そうなれば私には応援するしか術はない。

今はとりあえず、こいつの中で一番に立てていることを喜ぼうか。














六いの日です!!
うおぉまだ六いの日だからセーフです!
ぐだぐだでスミマセン加筆修正するかも



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あきゅろす。
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