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短編倉庫
馬鹿共の話


「文次郎!お前もこれから昼飯か!?良かったら一緒に…」

文次郎抱きつこうとしたとき、ぱしんと払われてしまった。

「触れんな」

いつになく不機嫌そうな彼の目は間違いなく俺を睨み付けているわけで。

「な、何言ってんだよ急に…いつもならこれくらいどうってことないだろ」

「うるせぇ。テメーなんざ嫌いだ」

「文次郎!」

「何度も言わせるな。俺に触れるな。俺を見るな。俺に話しかけるな。俺の傍に現れるな」

「文…」

「お前なんか大嫌いだ。この世で 一番っ…!?」

堪らず文次郎の胸ぐらを掴むと引き寄せた。

「っ何なんだよ!俺、お前に何かしたか!?いきなり嫌いだとか言われても、意味わかんねーよ!」

「……………」

文次郎が鐘突き台の方を横目で見たとき、正午を知らせる鐘が鳴り響いた。
と、同時に。

「嘘だ」

「ーーーーーーー…はぃ?」

あっさりと吐き出された言葉に俺の目は点になった。

今、なんとおっしゃいました?

そう尋ねればいかにも馬鹿にした表情で俺を鼻で笑う。

「耳悪ぃのかテメェ、言っただろうが。嘘でした〜ざ〜んねん」

「………な、っの、やろ、」

「そんじゃあ俺ぁ先に行くぜ。じゃあな、四月馬鹿」

「てっめっ…!……!!」

奴の肩を掴もうとしたとき、仙蔵が俺と去り行く奴の背の間に割って入った。

「まぁそう怒るな、留三郎」

「仙蔵」

「今日は四月一日だ。さっきのは、あの馬鹿の精一杯の愛情表現なんだ」

「え?」

「嘘は真の裏。その悪い頭でよーく考えてみるんだな」

「んなっ…」

「でわな」

振り返りざまに長い髪を俺の顔面に叩きつけ、食堂に向かっていった。

「なんだ、あいつまで…」

『テメーなんざ嫌いだ』

「ーーーーーーーまさか…」

『俺に触れるな。俺を見るな。俺に話しかけるな。俺の傍に現れるな』

(おいおいおいおい…)

『お前なんか大嫌いだ。この世で 一番…』

(まじかよ…)

自分でも気付かないうちに顔が熱くなってくる。
ああ、馬鹿め。俺もあいつもとんだ大馬鹿野郎だ。

「〜〜〜〜っ…文次郎ぉっ!!」

愛しい恋人への愛しさが募り、俺は廊下を駆け出していた。






















<エイプリルフールのルール>

・嘘を吐いていいのは午前中のみ、午後にネタバラシします。

・自分、他人を傷つける内容・結果をもたらす嘘を言ってはいけません。

その他に、エイプリルフールに言った嘘はその年に真実になることはない、というジンクスがあります。



だから二人の両想いは今年分保証されました。\(^O^)/

留三郎に文次郎と別れるという選択肢はないけど、文次郎は来年も再来年も留三郎に同じ嘘を吐き続けます。






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あきゅろす。
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