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短編倉庫
三割増し
「上がったぞ」

「おー」

リビングのドアが開き、タオルを被った文次郎が入ってくるのを目の端で捉えた。

「じゃ、俺も入ってくるかな」

「おう」

雑誌をガラスのテーブルに放り、ソファから立ち上がって文次郎に目をやる。
同棲してもう半年近く経つというのに、未だ文次郎は恥ずかしがって体を見せてくれない。
そのため、留三郎は風呂上がりの文次郎を眺めることができるこの貴重な時間がたまらなく好きだった。

しかし今回はいつもと勝手が違った。

「っ…!」

「ん?どうした」

「お、おまっ…その、それ…!」

あわあわと身振りで伝え、怪訝な表情をしながらも理解した文次郎が「ああ」と被っていたタオルを首にかけた。

「見たこと無かったか?」

文次郎が眼鏡をかけなおす。その仕草さえもどこか色っぽく見えるから不思議だ。

「お前、目 悪かったのか…」

「高校くらいからな。目付き悪いのはそのせいなんだ」

その文次郎の言葉など右から左に流れていく。

いつもの風呂上がりだって留三郎にとっては十分理性を刺激しうるものだが、今回は眼鏡をかけたことによっていつもの三割増し艶めいて見えた。

彼から漂ってくる石鹸の香りと、ズボンしか穿いておらずタオルで申し訳程度に胸先を隠しただけの剥き出しになっている上半身。
そして、紅潮した顔にかけられた眼鏡。

あまりに強い刺激に留三郎の頭はパンク寸前でくらくらしていた。

「と、留三郎!?」

ふらりとよろけた体を支えるのはよく知っている大きな手。

「…あ、ああ…平気だ。ちょっとのぼせちまった…」

「まだ湯に浸かってないのに!?」

文次郎は留三郎を受け止めたために姿勢が前屈みになっている。
その際、首にかけていたタオルがゆらゆらと揺れ、色づいた乳首がチラチラと留三郎の視界に入る。

これが限界まで持ちこたえていた彼にとどめを刺した。

「ぶしゃあああっ!!」

「ぎゃあああああああっ!?とっ、留三郎ぉおー!!」

彼は鼻から勢いよく血を噴き出し、そのままがっくりと気を失ってしまった…

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あきゅろす。
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