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ストレンジ・デイズ



「…お前達、私を忘れてないか…?」

花枝理事長に少し控えめに声をかけられ、俺はやっと我に返った。掴んでいた唄子さんの手をパッとはなす。

「すみません、ちょっと感動してしまって。話を戻します」

俺はふぬけた心を切り替え、理事長に向き直った。

「花枝理事長、折り入って、頼みがあります」

「…まだあるのか」

うんざりだとでも言わんばかりのヤクザ理事長。その恐すぎる容姿に俺は内心びくびくしながらも、勇気を出して口を開いた。

「響介様在学時には、この学園に生徒の保護者および学校関係者以外の立ち入りを、禁止して欲しいんです」

「なっ……、そりゃ無理だ。君にもわかってるだろう」

もちろん、無理を言っていることは百も承知だった。けれど響介様の安全のため、一歩も引くことは出来ない。

「学園内設備に破損箇所がないかどうか点検することは、学園の安全を守る上での義務だ。それには業者を呼ばねばならん」

「ではそれは俺がやりましょう。電気工事施工管理技師の資格、持ってますから」

「…君ね、この学園がどれだけ広いと思ってるんだ。そんなこと1人で出来るわけないだろう」

「では点検をする際には、その業者のリストを俺にください。こちらで全員、調べさせていただきます」

「………」

眉間に皺を寄せた理事長は腕を組み難しい顔をした。不機嫌なのが目に見えてわかる。

「…わかった、善処はする」

「ありがとうございます」

こちらの要求を完全に受け入れた訳ではないだろうが、理事長は一応首を縦に振ってくれた。顔に似合わずいい人…は失礼か。


「ところで香月くん、君に注意しておかなければならないことがある」

「なんですか?」

理事長は話しづらそうに唇を噛む。強面の顔がさらにいかつくなった。

「…実は我が校は、男のみの閉鎖された空間であるがゆえ、男同士の色恋沙汰が日常茶飯事になっている」

「は…?」

思わず言葉をなくした男の目の前で、理事長が頭を抱えている。もううんざりだ、とでも言いたげに。

「……つまり、ゲイの生徒が多い、ということでしょうか…?」

「そんな単純な話ではない」

表情を曇らせた理事長は、目だけを動かして俺に視線を送った。

「男は男に対して容赦がない。最近では男が男を強姦、という事件まで起こる始末だ。しかも被害者が何も言わないことをいいことに好き勝手し放題。油断していたらあっという間に襲われてしまう。特に、香月くんのような人は」

「お、俺ですか…!? でも教師ですよ?」

「そんなこと、奴らには関係ない」

くたびれた顔でうなずく理事長。俺はにわかには信じられなかった。ここは他県にも名が知られている名門進学校だ。確かに一部の生徒が乱れているという話は聞いたことはあるが、まさかここまでとは。


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あきゅろす。
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