ストレンジ・デイズ
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「香月、お前いつの間にあの鬼教師と仲良くなったんだよ!」
「え?」
その日の夜、夕飯作りを手伝いにきた香月に俺は怒りながら尋ねた。突然つっかかられた奴は戸惑いながらもエプロンをつけて下準備を始めていく。
「鬼教師って誰ですか?」
「新名に決まってんだろ! 今日あいつと一緒にいるの見たんだからな」
俺が香月に詰め寄る姿を見て唄子が隠れてニヤニヤしているのが見えた。俺とこいつのラブロマンスを期待しているところ悪いがそういう類いの嫉妬ではない。
「新名さんは良い先輩なんですよ。俺にも色々アドバイスしてくれるし。それに意外と可愛い一面もあるんですから」
「は!? 可愛い?」
「ええ、先輩相手に失礼ですけど。照れるとすぐ顔が真っ赤になって、俺の事を気に入ってくれているのに素直になれないところがまた……」
「ちょ、そういうこと迂闊に言うな、あの女に目をつけられるぞ」
「?」
さすがの唄子も香月の前で変態的趣味をオープンにすることはないが、香月が消えたら大興奮して勝手な妄想で盛り上がるだろう。俺だろうが新名だろうが、結局男なら何でも良いのだ。
「もー、キョウちゃんてば香月さんを困らせないでよね。香月さんだって色々付き合いがあるんだから」
「付き合いだけじゃねえだろ。同居してる野郎もいるって聞いたぞ。香月、お前が俺以外の人間と住んでるなんてありえねぇんだよ」
「ええ? もう夏休みなのにすごい今更な気が……いえ、何でもありません」
俺の機嫌を損ねないようにと、とりあえず謝る香月。俺はハンバーグの下ごしらえを始めた。俺と唄子と善、そして香月とその同居人の分だ。
「お前に同居人がいるのは知ってたけど、そんなに仲良いとは思わなかった。だって俺とそんな話全然しねーから」
「だって東海林さんの話なんかしてもキョウ様興味ないかなと思いまして」
「そりゃ興味ねーけどお前の事には興味あるだろ!!」
「え……」
照れたように顔が赤くなる香月と私は邪魔者だからといわんばかりに距離をとる唄子。自分で言い出しといてなんだが、居たたまれないくらいキモい雰囲気だ。
「なんだこの空気今すぐやめろ。ほら、唄子も戻ってこい」
「えーもー、ほんとキョウちゃんてば香月さんにベッタリなんだから。もし香月さんが結婚でもしたらどうするわけ?」
「は? こいつは結婚なんかしねぇよ。なぁ」
「はい、それはもちろん」
「ほら」
香月の言葉に唄子が涙ながらに頷いている。どこが奴の涙腺に触れたのかは謎だ。
「キョウちゃん……ちゃんと責任とってあげなさいよ。邪魔者は一時退散するからさ……」
「おい、お前どこ行く気だ。夕飯どうすんだよ」
「芽々ちゃん達の部屋にちょっと行くだけだから、ご飯までには戻るようにする。んじゃお二人さん、後はごゆっくり〜」
おかしな捨て台詞を残して素早く部屋を出ていく唄子。奴の言葉など無視して俺は料理の下ごしらえに取りかかった。
「そういえば明後日、怜悧様が来られるそうですね。俺がお迎えに行きますので、キョウ様はここで待っていてください」
「何だお前ももう知ってんのかよ。つか怜悧だけじゃねぇじゃん。乙香も来るんだぜ、お前知ってた?」
「ええ、俺も今朝怜悧様から聞きました。でも大丈夫、俺に任せてください。キョウ様もあの方を刺激しないようにお願いします。あなたに冷たくされたらすぐ泣いてしまわれますから」
「……はいはい」
乙香と会うことを思うと気が重くなったが、いざとなったら香月に相手をしてもらおう。俺はひたすら手を動かしながら怜悧と会えることだけを考えることにした。
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